トータル・フィアーズ


★disc rating: A

トータル・フィアーズ(1985)
The Sum of All Fears

  • 解説:賀来タクト
  • 発売日:2002年8月7日
  • 発売元:(株)イーストウエスト・ジャパン
  • 定価:税抜2,520円
  1. イフ・ウィ・クッド・リメンバー(3:30) If We Could Remember
  2. 作戦(5:58) The Mission
  3. 核爆弾(2:56) The Bomb
  4. ロシア訪問(2:48) That Went Well
  5. スタジアム(1:33) Clear the Stadium
  6. イフ・ウィー・クッド・スルー・ディス(3:37) If We Could Through This
  7. 爆弾の取り引き(2:35) The Deal
  8. テロリストの陰謀(2:27) Changes
  9. 最終攻撃態勢(2:13) Snap Count
  10. 彼の名前はオルソン(1:52) His Name Is Olson
  11. だれも寝てはならぬ〜歌劇『トゥーランドット』より(2:59) Nessun Dorma from Turandot
  12. 軍事施設への侵入(1:52) Deserted Lab
  13. 核爆発(2:51) Real Time
  14. ライアンの説得(6:06) How Close?
  15. グルシュコフからの贈り物(2:01) The Same Air
  16. イフ・ウィ・クッド・リメンバー(リプライズ)(3:31) If We Could Remember (reprise)
  • 1. and 16.
    • Written by Jerry Goldsmith and Paul Williams
    • Perfoermed by Yolanda Adams
  • 3.
    • Written by Jerry Goldsmith and Paul Williams
    • Perfoermed by Shana Blake Hill
  • 6.
    • Written by Carole King, Tabitha Fair, John Parish
    • Performed by Tabitha Fair
  • 11.
    • Written by Giacomo Puccini, Giuseppe Adami & Renato Simoni
    • Performed by Bruce Sledge
    • Conducted by Lawrence Foster


ロシア・ハウス』の音楽が好き、という監督フィル・アルデン・ロビンソンたっての要望で登板したゴールドスミスの秀作スコア。お得意ジャンルである政治スリラーに、これまたお得意のロシア風や中東風を味付けし、不必要な分厚さは無くとも貫禄のあるアレンジと、巨匠の名に相応しい出来映え。ここ最近では一番の完成度ではないか。


映画の冒頭で描かれる核弾頭紛失事件に流れる『2.』は、シャナ・ブレイク・ヒルのソプラノ・ヴォーカルに混声合唱が美しくメロディを歌い、核への鎮魂歌となっている印象的な曲だ。このメロディはエンド・クレジットで流れる主題歌へと引き継がれており、ポール・ウィリアムス作詞、トレヴァー・ホーンのプロデュース、ヨランダ・アダムスの歌のコラボレイションが聴きものとなっている。


しかし美しいだけじゃゴールドスミス登板の意味も薄いとばかり、スリリングな場面での重量感・迫力はどうだ。凝ったオーケストレイションなぞ不要とばかりにシンプルでありながら、十二分に楽器の特色を打ち出し、効果的な映画音楽として機能する。作曲家の個性が見事に出ている。さらにはプッチーニの有名曲の抜粋をプロデュースし(指揮はローレンス・フォスター)、大活躍である。


これらの音楽があると無いとで、映画本編の出来・印象度も大きく違ったに違いない。大力作だ。


賀来タクトの文章は、作曲舞台裏から劇中での音楽効果にまで渡り、こういうのを本当の評論と言うのだ。