SPY_N

★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


上海を舞台に、麻薬密輸を企む組織と警官たち、謎の日本人女性が絡むアクション映画。脚本なんてあって無いが如しで物語は面白くもないが、ハリウッドでは到底やらない危険なスタントを主演スターがこなすのが売りだ。


物語の詰まらなさはかなりのもの。序盤はアクションで引っ張るのに、それがなりを潜める中盤が相当に退屈なのが証明している。コメディっぽい場面もあるのに意外に殺伐とした展開、でもラストにはNG集があったりで、シリアスだかどうなんだかよく分からないのも歯切れが悪い。アメリカ人クーリオ役クーリオが英語を喋るのはともかく、香港映画なのに現地警察もシンジケートも謎の日本人女性ノリカ(藤原紀香)も、皆英語を喋る理由も分からない。まぁ、国際市場を狙ってのことなのだろうが。スタンリー・トンの演出もドラマ部分ではまるでリズム感が無い。


しかし、これは物語を楽しむ映画ではない、香港映画ならではの傍若無人で危険極まりないアクションを楽しむだけの映画だ、と割り切ってしまえばそれなりに楽しめる。


事実、演出の興味はそもそもドラマなんぞには無いんじゃないかと勘繰りたくなるくらい、アクション場面には迫力とキレがある。序盤にあるバイクを使った2階建てバスへのジャンプ場面や、港から公道に掛けてのカースタント、クンフーアクションなど、何気に主演スターがやっているのには仰天してしまう。主演のアーロン・クォックや敵役マーク・ダカスコスら、身体が動く役者がいるのは映画としてインパクトが強い。勿論、撮影やワイヤーワークの技術力の高さもさすが香港映画だ。


中でもクライマクス、建築中高層ビルでのくだりはもの凄い。クレーン釣りされた大型ガラス窓の上で、アーロン・クォック、藤原紀香、クーリオら本人たちが格闘するのだ。しかもこの場面がこれまた結構長いので、高所恐怖症の僕なんか手の平にじっとり汗をかきっぱなし。はっきり言ってこの場面だけでも観る価値がる。


映画としての出来栄えは芳しくないが、取り敢えず紀香だ。全編英語での台詞に初挑戦、スタントにも初挑戦、日本ではお目に掛かれないようなサーヴィス・ショットもあって、大熱演なのは確か。いやいや、本当に良く頑張っているんだ。頑張ってはいるんだが、やはり演技は駄目。テレビドラマやCFでは通用しても、大画面に耐えられる程の力がない。台詞や表情に抑揚や感情が無いのは致命的だ。ルックスやスター性はスケールがあるので、久々に和製ボンドガールを目指してもらいたいものだが、それにはもっと演技力や語学力を鍛えなきゃ。元々好きだったので応援はするけどね。


それにしてもこの邦題、紀香のことを言いたいのは分かるけど、アンダーバーが何故半角でなく全角なんだ? 仕事の関係上、気になってしょうがない。


SPY_N
雷霆戦警 (a.k.a. China Strike Force)

  • 2000年 / 香港 / カラー / 92分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for violence and language.
  • 劇場公開日:2002.7.20.
  • 鑑賞日時:2002.7.27.
  • 劇場:渋谷東急3/ステレオ?での上映。公開2週目土曜昼過ぎの回、374席の劇場は3〜4割程度の入り。
  • パンフレットはオールカラー、700円。原題名や上映時間などフォーマットがまるで書かれていないので、値段の割りに資料価値が殆ど無いのは困りものですが、やはりこの人、紀香へのインタヴューはあります。
  • 公式サイト:http://www.spy-n.jp/ 予告編、壁紙、スクリーンセーバーなど。紀香インタヴューの動画もありますが、内容はパンフレットと同じ内容でした。