ブレイド2


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

吸血鬼と人間の合いの子である黒人吸血鬼ハンター、ブレイドウェズリー・スナイプス)。人間と吸血鬼の長所を持ち、陽の光もニンニクも十字架も効かずに吸血鬼を殺戮していく。そんな彼を、吸血鬼たちは「デイ・ウォーカー」として恐れていた。しかし吸血鬼の血をすするリーパーズ=死神族の出現により、吸血鬼とブレイドは一時休戦、リーパーズ撲滅の為に結託することになる。


監督は前作のスティーヴン・ノリントンから秀作ホラー『ミミック』(1997)のギレルモ・デル・トロに交代。その結果、『ブレイド2』は前作以上にパワフル且つ美しい、アクション・ホラーに仕上がった。


前作の問題は、面白い場面とそうでない場面にムラがあったこと。しかし今回は、冒頭からラストまで立て続けにアクションとグロテスクな見せ場をぎっしり敷き詰め、押せ押せの展開にしている。演出にも非常に力が入っているのだが、観客サーヴィスというより監督が自分の好きな映画を撮っているのが明らか。それが微笑ましくさえ思えるのは、押し付けがましくないからか。特にスティーヴ・ジョンソンのメイクアップ工房製作のグロテスクなリーパーズの造形からして、『ミミック』に共通した監督の趣味が伺える。


その全編を覆うグロテスクさも、エレガントな照明と闇に染められ、時に美しくさえ感じられる。舞台であるプラハで実際にロケされた空気感も重苦しくて良いし、これ見よがしな映像美でないのも良い。アクション・ホラーの範疇に観客の関心を押し留め、余計な注意を向けさせないようとする配慮が感じられた。特に終盤のある別れの場面は、死と美が同居した傑出した映像になっている。これでドラマがもう少し分厚かったら、ホラー映画史に残る名場面になったかも知れない。


アクションは迫力満点、但し刀を使った動きが減ったのと、時にアクションが延々続くとダレるのが残念だ。特撮は優秀で、前作でも1つの見せ場だった吸血鬼が燃える塵のようになって消滅するくだりがより派手になっている。


作品には期待していたスケールの大きさは左程感じられなかった。設定はそれなりに壮大なのに、時間と場所を限定し、アクションの合間にドラマがある作りにしたからだ。近親憎悪を扱ったドラマは要所は押さえているものの、もっと濃くても良かったのではないだろうか。そうすればドラマとしても見応えも十分になった筈。ドラマよりもアクション重視は、この映画の方法論としては決して間違いではないが、それでも惜しまれる。


ブレイドを演じるウェズリー・スナイプスは颯爽とし、殺気をはらみ、登場するだけで絵になるし、凡庸なアクション俳優とは動きも格の違いを見せ付ける。このシリーズの魅力は、間違いなく彼の魅力に負うところが大きい。クリス・クリストファーソンは、前作ではどこか飄々とした持ち味をさり気無く出して作品の中で息抜きになっていた。今回は緊張感のある役なので、単なる雰囲気担当だけになってしまって勿体無い。脚本の描きこみ不足を補うまでに至らなかった。


それにしても前作はR-15指定だったのに、より一層残虐度が増しているのに指定無しというのも不思議だ。


ブレイド2
Blade II

  • 2002年 / アメリカ / カラー / 118分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for strong pervasive violence, language, some drug use and sexual content.
  • 劇場公開日:2002.6.15.
  • 鑑賞日時:2002.6.24.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘6/ドルビーデジタルでの上映。公開2週目、平日月曜昼の回。170席の劇場は15人程度の入り。
  • パンフレットは肖像権だか版権だかの関係で回収されたとかで、残念ながら販売されていなかった。
  • 公式サイト:http://www.blade2.jp/ スタッフ&キャスト紹介、人物相関図(キャラ人気投票あり)、予告編、壁紙、スクリーンセーバー、プロダクション・ノート、コンセプト・アート集、ゲーム、監督来日日記、監督インタヴュー、映画のファンというプロレスラー蝶野正洋インタヴュー、アクション監督&出演のドニー・イェン・インタヴューなど、かなり盛りだくさん。特にデザイン画関連は観ていて楽しい。結構ネタバレ気味だが。