スコーピオン・キング


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

冷酷非情な暴君メムノン(スティーヴン・ブランド)は勢力拡大の為に多民族の殲滅を図っていた。民衆の為に立ち上がったのが、暗殺民族の生き残りマサイアス(ザ・ロック)。マサイアスはメムノン側で妖気を使う呪術師カサンドラケリー・フー)を暗殺すべく、都市ゴモラに向かう。

大体が映画のポスターは実際よりも立派か大袈裟に描かれているものだが、たまには例外もある。全編通してポスターに描かれているよりも遥かに少ないわずかな布切れ(とすら言えないような代物)をまとったケリー・フーの姿がそれ。上映時間92分という格に合った適切な長さや彼女の御姿を観るにつけ、観ている間は退屈しないで済むという典型的B級映画である。


筋肉むきむきの男が剣と体力で暴れ回るバーバリズム溢れる古代劇ということで、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の大作『コナン・ザ・グレート』(1982)を思い出したのは僕だけではないだろう。こちらは古代エジプトを舞台に、『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)で出番は少ないもののフィーチャーされていた悪役、スコーピオン・キングを主役に据えた前日談だ。


粗雑な展開も撮り方もいささかお子様向け、白人やアジア系美女が古代エジプトに何故普通にいるのかという違和感はともかく、全てアメリカ国内で撮った為か砂漠の広大感がまるで無い安普請が泣かせるが、このご時世に派手な特撮に頼らず剣戟を撮ろうとする志は買える。ただ問題は、これが余り弾まないのだ。監督チャック・ラッセルには、『マスク』(1994)、『イレイサー』(1996)同様に観客を乗せる手腕に疑問を禁じ得ないし、決定的に高揚感に欠けている。『コナン・ザ・グレート』も出来が良いとは言えないものの、ジョン・ミリアス演出のアクも個性だった。だがラッセルは、雇われ監督に徹してただ物語を語っているだけなのだ。


脚本は肝心のスコーピオン・キングの名の由来が取って付けたようだったり、展開がお約束で占められたりで、非常に安易。『ハムナプトラ』シリーズを作り出した、監督・脚本家であるスティーヴン・ソマーズもライターの1人として名を連ねているのだから、責任は免れない。『ハムナプトラ2』の試写を観たユニヴァーサルの重役の一言で始まった企画だったのだから、そもそも安易なやっつけ仕事だったということだろうか。


ということで、興味の焦点は主役を演じるプロレス界の大スター、ザ・ロックが映画界でもスターに成り得るかという点に絞られる。シュワルツネッガーを筆頭にハリウッドのアクション・スターの老齢化が甚だしい中、彼は映画会社の注目を集める期待の大物新人なのだ。結論から言うと、最低限のレベルはクリアーしているので、今後の成長が期待出来るのではないか。身体は言うに及ばず、顔も良いし、愛嬌があるので人を引き付ける。細かい演技はまだまだだが(かと言って今後も伸びるかというと不明)、大根のシュワでさえ問題無くスクリーンで映えるのだから、彼の正統派後継者として注目しよう。


大画面で観て思うのは、人間の肉体の持つ迫力はやはり凄い、ということ。ザ・ロックマイケル・クラーク・ダンカンの取っ組み合いの場面は劇中で最も迫力がある。190cm以上の、しかも筋骨隆々とした大男同士の肉弾戦は、特撮ではまだまだ表現し得ない域にあるのだ。


全体にお子様向けの作りな割りには出血が無くとも暴力場面はあるし、裸が無くともお色気は多い。中途半端に扇情的なのが、子供向けとしては何となくいかがわしい商品、という気がするのだけど。


スコーピオン・キング
The Scorpion King

  • 2002年/アメリカ/カラー/92分/画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for intense sequences of action violence and some sensuality.
  • 劇場公開日:2002.6.8.
  • 鑑賞日時:2002.6.8.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘8/ドルビーデジタルでの上映。公開初日、土曜夕方の回。238席の劇場は10人強の入り。先行レイトショーの成績は良かったらしいので、これもワールドカップ人気の影響か?
  • パンフレットは500円。監督・キャストへのインタヴュー、ロック様来日記者会見等。とにかくロック様、という作りです。記名記事を1人の映画評論家(山口直樹)で書いてあるのは珍しい。
  • 公式サイト:http://www.uipjapan.com/scorpionking/ キャスト&スタッフ紹介、キャスト&監督インタヴュー動画(日本語字幕無し)、フォトギャラリー、Windows Mediaスキン、予告編、壁紙、スクリーンセーバーなど。Flashサイトは全体に細かいところまで出来ていて、面白いデザインです。