キューティ・ブロンド


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

エル(リース・ウィザースプーン)はカリフォルニアで学生生活をエンジョイする金持ち大学生。ど派手な高級ブランドに身を包み、ハンサムな彼氏との仲も好調。明るく人望も厚い彼女は女性社交クラブ(TVドラマ『ビバリーヒルズ青春白書』にも出て来たネ)の会長でもある。ところが彼氏ワーナー(マシュー・デイヴィス)に、突然の別れの告白を告げられてしまう。曰く、名門の出の自分は将来を見据えてハーヴァードの法科に入り、オツムの立派な女性と付き合うのだと。ショックを受けるものの意を決したエルは猛勉強、見事ハーヴァード法学部に編入成功。ワーナーの後を追いかけるのだが・・・。


安直に”プリティ”とか”キューティ”などと邦題を付ける配給会社の白痴的幼児退行的センスにうんざりしつつも、作品自体には罪が無いのは当たり前。これが掘り出しものの映画だった。


序盤は主人公が見掛け倒しで軽薄、アタマも悪そうに見え、実は違うことが観客に提示される。この構造自体が劇中でも適用されていて、ハーヴァードに入ってからの彼女の受難へと続くのが上手い。これが長編処女作というロバート・ルケティックの演出は、だらだらしないのが取り得なだけで他は凡庸だが、意外に脚本がしっかりしているのに救われている(カレン・マックラー・ルッツとカースティン・スミスの共作)。これは、自身がブロンドの弁護士アマンダ・ブラウンが書いた原作がきちんとしているのかも知れない。


後を追って入学したものの、ワーナーには既に意地悪な彼女(セルマ・ブラウン)が居て、おまけにブロンド&どピンクの高級ブランドで固めたエルのファッションは、地味でイケてない同級生達の間で浮きまくっている。その為に最初は誰にも相手にされず、仲良くなったのは美容室のおばさん(ジェニファー・クーリッジ)だけ、という悲惨且つ常套手段の展開も快調。しかし同級生の冷たい視線と、シゴキに等しい教授の厳しい授業にもめげず、やがて彼女は法律家として目覚めていくのだ。


大体がお約束の展開であっても、どんな苦難も持ち前の明るさと根性で乗り切るヒロインを演じるリース・ウィザースプーンが好感度大。彼女の魅力が作品を引っ張る。同じ学園ものでも、佳作『ハイスクール白書/優等生ギャルに気を付けろ!』(ビデオ公開/1999)でのやたら上昇志向が激しい、こまっしゃくれた生徒会長立候補役とまるで違う。金持ちで頭が良く積極的な女学生などという、1つ間違えれば嫌味になるのを避ける術=演技力があるのだ。だから、エルの持ち前の大らかさで同級生達の態度が氷解していくのも、あるいは殺人事件の容疑者が彼女に信頼を置くのも、自然に見えるのである。


TATARI タタリ』(1999)とか『ファイナル・デスティネーション』(2000)なぞのホラー映画でヒロインだったアリ・ラーターが今回の容疑者役だとか、懐かしや1960年代後半のグラマー女優ラクエル・ウェルチが証人役だとか、脇の女優もそれなりに華やか。しかし飽くまでもリースの引き立て役にしか過ぎない。


活き活きとした女性陣に比べて男どもは皆面白みが無いし、クライマクスの法廷場面が呆気無いが、主人公の成長を描くコメディ映画としては悪くない。人は見かけによらないなどと正統派のお説教も織り込みつつ、笑わせながら最後は爽やかに締めるあたりが、気軽に楽しめ、元気の出るコメディとしては十分。その後、彼女がどんな歩みを見せるのか、早くも続編が決定らしいのだが・・・。


キューティ・ブロンド
Legally Blonde

  • 2001年 / アメリカ / カラー / 96分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for language and sexual references.
  • 劇場公開日:2002.4.27.
  • 鑑賞日時:2002.5.3.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘4/ドルビーデジタルでの上映。公開1週目、金曜レイトショー。175席の劇場は、ゴールデン・ウィークだというのに半分の入り。
  • パンフレットは600円。ヒロインのファッションやヘアスタイルが、数ページに渡って紹介されているのがらしい。
  • 公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/cutieblonde/ 全体にカラフルでレイアウトも賑やかなサイト。上記パンフレットと内容は重複しているが、面白いのは「ブロンド記念日」なるページ。ブロンドヘアの有名女性をカレンダー式に紹介している。もっと分量があっても良い。エルの人生アドバイス、予告編、上映劇場紹介等あり。