オーシャンズ11


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


フランク・シナトラ、サミー・デイヴィス・ジュニアらのシナトラ一家総出演で有名な『オーシャンと11人の仲間』(1960)のリメイク作品。監督スティーヴン・ソダーバーグ、音楽デイヴィッド・ホルムズ、主演ジョージ・クルーニーは傑作『アウト・オブ・サイト』(1998)のトリオだ。調子良く現代調ジャズが流れる冒頭からして、両者の雰囲気は似通っている。


仮出獄したばかりの前科者ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)は、無慈悲なカジノ王(アンディ・ガルシア)の持つ、3つのカジノの売上金が集められている金庫を襲う計画を立てる。金庫は地下深くにあり、堅牢さと警備は要塞並。参謀役(ブラッド・ピット)、新米スリ(マット・デイモン)ら10人の仲間を呼び寄せ、計画・準備・実行が描かれるこの映画は、全体にリラックスした雰囲気が身上だ。仲間が召集されるくだりは笑いも交えているものの、『七人の侍』(1954)のようなわくわくさせる感じが希薄。しかもそのメンバー全員が活躍する場面がある訳でもない。こういう娯楽犯罪映画ではそこいら辺もお楽しみの筈なので、ちょっと残念だ。根は生真面目なソダーバーグだからだろうか。


その後の準備の過程の演出も特に力を入れられておらず、そこまでの前半はユーモアを楽しむものと割り切ろう。分割画面等の映像テクニックが冴えているので、緩いギャグを適度に眺めていても、それはそれで悪くない。特に機械に強いという設定のアホな双子兄弟(ケイシー・アフレックとスコット・カーン)は笑わせる。


こんな調子の前半だが、映画の後半を丸々占める実行場面は打って変わって非常に面白い。物々しい警備や襲撃方法も現代的、適度にスリリングで演出もピシリを決まり、これは快感と言った方が適切。大した破綻もせず、ほぼ計画通りに緻密に物事が進む経過を見せるのは、往年のTVシリーズスパイ大作戦』(1966〜1973)を思い出させる。全てが明らかになるのは終盤になってから、何だかヘンだぞと思いつつも一杯食わされた。仕掛け自体は特に新手ではないので、勘の良い人には分かってしまうかも知れないが。


役者ではやはりジョージ・クルーニーが目を引く。この人は本当にスターらしいスケールが出てきた。茶目っ気と大胆不敵な図太さを持つ個性をうまく生かし、今回も柄に合った役を伸び伸び演じていて、観ていて気持ち良い。ブラッド・ピットもNo.2の座を楽しみながら演じているのが伝わって来る。


そう、この映画のキャストは皆楽しみながら演じている。それもこの映画のお楽しみだ。今の映画界で新米役だったらこの人だろうというマット・デイモンや、『ゴッドファーザー PART III』(1990)でカジノ経営を任されたその後じゃないかと思わせるアンディ・ガルシアらの配役を見るにつけ、意外性はなくとも遊び心がある。脇役メンバーの中では、特に老人詐欺師役カール・ライナーが素晴らしい。1970年代の反抗児イメージがあったエリオット・グールドは、老いてもTVシリーズ『フレンズ』でロス&モニカの父親役で見掛けたりして健在だが、今回はもう少し活躍して欲しかった。やはり『アウト・オブ・サイト』組のご贔屓ドン・チードルも今ひとつ個性が出ずに勿体無い。


その一方で、紅一点の大スター、大口開けて笑わないと駄目なジュリア・ロバーツは全く魅力無し。クルーニーの元妻でガルシアの愛人という設定なのだが、何で男2人が彼女に惹かれるのかさっぱり分からない。『マイケル・コリンズ』(1996)もそうだったが、神妙に脇役を演じると演技力の無さを露呈してしまい、まるで味の抜けた鶏ガラがハイヒール履いて歩いているよう。クルーニーとの相性もピンと来ず、『アウト・オブ・サイト』のジェニファー・ロペスは良かった、などと思ってしまった。


顔ぶれの割りに濃厚さは無く、そつなく新米教育ものも盛り込んだ脚本もドラマ部分は薄味、全体に軽い娯楽作の体を成しているが、スター達と一緒にお祭り気分を楽しもうではないか。


オーシャンズ11
Ocean's Eleven

  • 2001年/アメリカ/カラー/117分/画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for some language and sexual content.
  • 劇場公開日:2002.1.26.
  • 鑑賞日:2002.2.8./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘1/SDDS
  • 公開2週目の金曜レイトショー、452席の劇場は7割の入り。実は公開2日目の日曜に同じ劇場を訪れたのだけど、その時はほぼ満席だった為に断念したのだ。大ヒットは嬉しいね。
  • パンフレットは600円、ソダーバーグやブラッド・ピットのインタヴュー、スタッフ・キャスト紹介、モンキー・パンチの文章(ドロボーもので、ということでしょう)、小堺一機らの対談など。オールカラーでしかも分量もあり、ワーナーらしく頑張った内容です。
  • 公式サイト:http://www.oceans11.jp/ のっけからホルムズの軽快な音楽が流れるのが気持ち良いサイト。フォト・ギャラリー、予告編、壁紙&スクリーンセーバー、懸賞付きクイズなど。