スパイキッズ


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

元凄腕スパイ同士だった夫婦(アントニオ・バンデラスカーラ・グギーノ)が誘拐された。犯人で世界的陰謀計画の加担者は、子供向けテレビショーの人気ホストの顔を持つフループ(アラン・カミング)。有名スパイを捕らえては改造人間にし、自分のショーに出演させているマッドサイエンティストだ。仲が良いとは言い難い幼い姉弟アレクサ・ヴェガダリル・サバラ)は両親の正体を知って驚くも、ジェームズ・ボンド真っ青のスパイ道具を携え、両親救出の為に悪の孤島に向かう。


7千ドルという冗談みたいな製作費の『エル・マリアッチ』(1992)でメジャー監督デヴュー後、その続編『デスペラード』(1995)以降もB級テイスト溢れるアクション/コメディ/ホラー系、いわゆるジャンル・ムーヴィーを連発してきたロバート・ロドリゲス。新作はファミリー映画とは意外だが、スタッフ/キャストはいつもの顔触れで揃えている。


子供っぽいと言えばその通り。十歳前後の子供が主人公の話なのだから。それでも冒頭で語られるスパイ夫婦の馴れ初めやら、『007/私を愛したスパイ』(1977)のパロディのオチで締め括る結婚式やらで笑わせ、最初の掴みはOK。活躍する小道具類も荒唐無稽で楽しいし、血も暴力も無い。元々幼児体質気味のロドリゲスなので、存外合った題材なのだろう。ピアース・ブロスナンになってから色気は消え、幼児化している元祖を考えれば、他愛無く無邪気に楽しめるこっちの方がむしろ正当だとさえ思える、などとは言い過ぎかな。


バンちゃんもさることながら、脇役にチーチ・マリンダニー・トレホとロドリゲス映画の常連を並べ、皺の増えたロバート・パトリックなんて新顔まで出し、ラストには旬の大スター登場のお楽しみまである。特に改造人間を繰り出すアラン・カミングは、派手な衣装も違和感無く着こなし、マッドサイエンティストな快演でこれがはまり役。この人『ロミーとミッシェルの場合』(1997)『アイズ ワイド シャット』(1999)と笑わせ、血みどろシェイクスピア劇の『タイタス』(2000)ではエキセントリックな悪役を演じていた。芸の広さを見せていたけど、今回が一番楽しそう。


ロドリゲスの演出はどの作品も前半はかなり見せるのに、後半息切れするのが常だった。今回もその感はあるけれど、悪ノリを控え、適度にハチャメチャを抑えたスタイルは好感が持てる。少々グロな改造人間やロボット達もおもちゃ箱をひっくり返したようで楽しい。特に頭手足が親指のサムサムは気に入った。
但し物足り無さが残るのは、子供達が意外に主体性を持って動かず、いわゆる巻き込まれ型の展開だから。子供が小道具でもって大活躍する映画を期待すると、少々当てが外れる。


謎なのは、何でこんなに作曲家が多いのか。ジョン・デブニー、ハリー・グレグスン=ウィリアムス、ロバート・ロドリゲス自身にロックバンドのロス・ロボス等、総勢7人。ダニー・エルフマンの手によると思われるテーマ曲は中々燃えまっせ。


スパイキッズ
Spy Kids

  • 2001年 / アメリカ / カラー / 88分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG for action sequences and brief language.
  • 劇場公開日:2002.1.5.
  • 鑑賞日:2002.1.5./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘6/ドルビーデジタル
  • 新百合ヶ丘での公開初日(都内では2001年12月15日に封切り済)、170席の劇場は7割程度の入り。
  • パンフレットは600円。表紙も含めて紙質は立派ですが、この薄い内容ならば紙質を落としてまでも安くしてもらいたいもの。
  • 公式サイト:http://www.spykids-jp.com/ 壁紙、スクリーンセーバー、ゲームにスパイグッズ紹介など。デザインが面白い、遊び心溢れるサイトです。