バンディッツ


★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


暴力を用いずに銀行強盗を繰り返す脱獄囚(ブルース・ウィリスビリー・ボブ・ソーントン)と、ひょんなことから彼らに誘拐された孤独な主婦(ケイト・ブランシェット)。彼らの人間模様をコミカルに描こうとしたこの犯罪映画は、しかしながらここ10年ばかり不振が続いているバリー・レヴィンソン監督作品でもある。1980年代に傑作・秀作・佳作・ヒット作も送り出していたのはかつての姿。1990年代以降はもっぱら面白味に欠ける作品を連発しているので、今度こと復活なるかと毎回期待させる監督になってしまった。どうも『トイズ』(1992)辺りから凋落が始まったような気がしてならない。


そんな訳である程度の不安と期待が入り混じった状態で観たのだが、予想通りの範疇に収まる出来映えなのは残念だった。映画が始まってすぐにラストが読めてしまう脚本や、ブルース・ウィリスが台詞にある通りハンサムに見えない点、クライマクスが最初から読めてしまう為に盛り上がりに欠けるなど、この映画の短所を挙げればいくらでも出て来る。序盤の脱獄から即強盗へと繋がるテンポは快調で、レヴィンソン復活かと思ったのはつかの間だった。最後まで見られたのは、ある意味予定調和の世界だったからだろう。それでもこの内容で2時間は長過ぎる。1時間半程度に収めてくれたら、ピリリとした小品に仕上がったかも知れないのに。


今回のブルース・ウィリスに個性も魅力も無いのは残念でも、生半可な医療知識を持ち合わせた神経質な男を演じたビリー・ボブ・ソーントンが笑わせる。オーヴァアクト気味でも演技が内容に沿ったものなので、これは正解だろう。しかしこの2人の個性のぶつかり合いが今一つで、要はウィリスがミスキャストなのだ。ソーントンのアクの強い芸も、相手役がより魅力的ならば引き立っただろう。


この映画一番の見所は、ケイト・ブランシェットのコメディエンヌ振りだ。『エリザベス』(1998)でのオスカー主演女優賞は『恋におちたシェイクスピア』(1998)のグウィネス・パルトロウにさらわれたものの、その後の活躍・快進撃は留まることを知らない。『理想の結婚』(1999)『狂っちゃいないぜ!』(1999)『リプリー』(1999)『ギフト(2000)で、それぞれ全く違った役所で楽しませてくれた。今回はボニー・タイラーの歌に合わせて料理する登場シーンから魅力全開、彼女主演のコメディも見たいと思わせる。その一方でガキっぽい男どもを優しく包み込み、2人から愛される女性として説得力がある。演技力には勿論定評があるけど、ヘンに臭み・嫌味が漂わない自然体こそ彼女の持ち味。この輝きは見逃せない。もっと活躍する場面を見たかったくらいだ。


バンディッツ
Bandits

  • 2001年/アメリカ/カラー/124分/画面比 2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for some sexual content, language and violence.
  • 劇場公開日:2001.12.29.
  • 鑑賞日:2002.1.4./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘8/ドルビーデジタル
  • 公開1週目、平日とは言え正月明け金曜日の日中。238席の劇場は6割程度の入り。
  • パンフレットは600円。メジャー各社はこの値段に落ち着きつつありますね。ワーナーの500円路線に頑張ってもらいたいところ。内容は平均的で、キャスト&スタッフの紹介にプロダクション・ノートが2ページ、可も無く不可も無し。
  • 公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/bandits/ 壁紙、スクリーンセーバー、簡単なゲームにメディカルチェックなど。大手のお正月映画にしては少々寂しいサイトです。