トゥームレイダー


★film rating: C
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


イギリス製人気ゲームの映画化。莫大な遺産を相続した大富豪ララ・クロフトアンジェリーナ・ジョリー)は、豪邸に住みながらも世界中を駆け巡るトレジャーハンターだ。果たして彼女は、時を支配できる秘宝を巡って秘密結社と激しい闘いを繰り広げ、世界を救えるのだろうか。


ゲーム版同様にグラマラスで活動的なララ役として、アンジェリーナ・ジョリーは完璧なルックスを備えている。アクションの切れも悪くないし、ふてぶてしさもあって、頼れるヒロインとして頑張っている。しかし全体に演技が硬く、時折表情も単調に見える。実父ジョン・ヴォイトとの父娘再会シーンは力が入っていたが、『狂っちゃいないぜ!』(1999)や『『17歳のカルテ』(1999)の方が(特に柔軟な前者が)良かった。早くも続編が決まっているので、次回はもう少ししなやかさが欲しい所だ。


監督はサイモン・ウェスト。『コン・エアー』(1997)、『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』(1999)と観ているが、どちらも面白みに欠ける作品だった。今回も冒頭のララ対殺人ロボットのアクション・シーンで、下手糞さを見せる。激しいアクションを細かいショットで繋げば迫力が出ると勘違いしているのだ。編集が細かすぎて状況不明、役者の肉体の鼓動を描写出来ない、カタルシスも何も無いという、最近の大作でよく見掛ける編集パターンだった。また随所で東洋の神秘を醸しだそうにも、雰囲気などまるで無し。それでも前半にあるバンジー・ジャンプを使ったアクションや、レイ・ハリーハウゼンの『シンドバッド/黄金の航海』(1975)を彷彿とさせる多数の手に剣を持った巨大な仏像との闘いなどは、道具立ての面白さで見せはする。しかし所詮はそれ止まり。特に致命的なのは、この種の冒険アクションに不可欠な、作者である監督・脚本家の思い入れが欠落していることだ。


ルーカス=スピルバーグの『インディ・ジョーンズ・シリーズ』にせよ、出来はともかく第2のインディを狙った『ハムナプトラ・シリーズ』にせよ、作者の情熱がスクリーンを通してこちらに伝わってきていた。さらには随所にあった遊び心や、観客を喜ばせようと腐心する様は、ある種感動的でさえあった。ところがこの映画は違う。観客は上映時間の間、ご都合主義の展開と、大して可笑しくも無い中途半端なユーモア、事務的なアクションの羅列を眺めさせられることになりる。そんな作品の行間に作者の情熱を見つけるのは難しい。只でさえ無内容の映画なのに、これでは劇場でわざわざ観る価値もない。無内容の大傑作『レイダース/失われたアーク』(1981)などと比べるのは無謀というもの。前半は退屈しないが、後半は尻すぼみに面白く無くなり、短い上映時間なのに早く終わらないかな、と漫然とスクリーンを眺める羽目になるのだ。


また活劇に付き物の楽しい音楽が無いのも詰まらなさに貢献している。当初登板予定だったジェリー・ゴールドスミスが盲腸で降板、代打のマイケル・ケイメンの曲はボツ、急遽登場のグレーム・レヴェルには2週間しか時間が無かった為とも思われるが、『レッド プラネット』(2000)同様に相変わらず画面に合っているんだか合っていないんだか分からない、メロディも無く盛り上がらないドコドコ・シンセ音楽の垂れ流しではいかん。


続編を作るのであれば、もっと活劇の分かる監督と、しっかりした脚本、躍動感のある音楽が必要不可欠。そうでないと同じ轍を踏むのは明白だ。


トゥームレイダー
Lara Croft Tomb Raider

  • 2001年 / アメリカ、イギリス、ドイツ、日本 / カラー / 100分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for action violence and some sensuality.
  • 劇場公開日:2001.10.6.
  • 鑑賞日:2001.10.8./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘1/SDDS
  • 公開3日目、体育の日の朝初回。452席の劇場は半分の入り。ゲームものということか、子供連れが目立った。
  • プログラムは500円、価格や簡潔な舞台裏紹介など含めて、オールカラーで頑張っています。アンジェリーナをフィーチャーしているのはさすがというか。
  • 公式サイト:http://tombraider.eigafan.com/ 予告編、スティル・ギャラリーなど。ランドローバーやエリクソンYAMAHAなど、タイアップ企業へのリンクが目立ちます。エンディングを歌うU2へのリンクまであり。