ラッシュアワー2


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


喋りは苦手だが腕っ節は滅法強い香港警察の刑事リー(ジャッキー・チェン)と、腕っ節は軟弱だが口八丁手八丁で調子の良いLA市警刑事のカーター(クリス・タッカー)のコンビが活躍するシリーズ2作目。香港マフィアが黒幕と思われた偽札事件を巡り、主人公2人が事件を追う。


前回はLAが主な舞台だったが、今回は香港、LA、ラスベガスと舞台も移動して、製作費も掛かっている。それが007のように左程スケール感に貢献していないのはご愛嬌。今年全米No.2の大ヒットだと気合入れて観に行くと拍子抜けの、前作同様に肩の凝らないB級テイストな娯楽アクション・コメディなのだ。


このシリーズでのジャッキーのアクションは、香港時代(特に1980年代)の驚愕もの、あるいは観ていて心配になるような決死の場面とかではなく、小技が効いたすばしこい動きを楽しむのが正しい鑑賞法だ(そもそも作品自体にも、傑作『プロジェクトA』(1984)のようなハラハラドキドキのパワーはここにはない)。お得意の小道具(椅子等)を使ったりした場面を観ると、この人はチャップリンとかのサイレント・スラプスティック・コメディなどをよく観て勉強しているんだな、などと今更ながら感心したり。英語も堪能とは言えないけれど、面白い台詞をあの愛嬌のある表情で言われると笑ってしまう。特にある悲しみに暮れて車を運転する場面で見せるくだりなぞ、台詞が無とも表情豊か。こういった点がアメリカで受け入れられたのだろう。もう47歳だけど、身体が動く限りはこの路線で行ける。


相棒役クリス・タッカーは今回も笑わせる。正直言って台詞中心のギャグには参ったところもあったけれど、カラオケでマイクル・ジャクソンの真似したりで(どうやら十八番だったらしい)視覚的にも楽しめる。それにあの目玉、あの表情。根拠無き自信過剰と自意識過剰が笑いを生み、その調子の良さがこのシリーズのテンポを作っているのだ。


悪役勢はジョン・ローンチャン・ツィイーの新旧男女スター。ローンは英語は達者だけれど、歳食っての厚化粧が何だか痛々しい。本来ならば出番の少なさをカリスマ性や華で補う役どころなのに、観ていてちょっとつらいのが彼の凋落を物語っているよう。一方、冷酷非情な殺し屋を売出し中のツイィーが化粧濃い目のキツ目に演じていて、英語の台詞も無く、退場の仕方も「え!?マジ!?」という代物だが、そこはスター街道驀進中の勢いでカヴァー。回し蹴りアクションの切れも良い。さらなる続編にも出ないかなぁ。いや、あり得るな。


こうなると話の方はどうでも良くって、筋立てなぞあるが無いが如し。脚本と演出は主役2人の単なる引き立て役に過ぎない。相変わらずブレット・ラトナーの演出はジャッキーのアクションの魅力をスクリーンに収め切ることが出来ていないけど、分相応の90分という短い尺なのは好感が持てる。『燃えよドラゴン』(1973)やラトナーの次回作『レッド・ドラゴン』(2002)などへの目配せも楽しめる。第一、音楽も燃えよ『ドラゴン』と同じくラロ・シフリンだし。そういやジャッキーが自分をスヌーピーに例える可笑しい場面があって、クレジット無しで出演の黒人俳優は『アウト・オブ・サイト』(1998)でスヌーピーてぇ役だったなぁ。いやこれは単なる偶然か。


単純に1作目と比較しても、出来映えはどっこいどっこい。しかし不思議と続編(今度はNYか?)が観たくなる作品だし、要所要所が面白い。主役コンビがこなれてきたというのもあろう。背が低くてがっしりしたジャッキーと、ひょろりとしたタッカーの背格好の良さがいい感じ。


過大な期待もせず、ポップコーン片手に気軽に楽しみ、それでお終い。それがこの映画の正しい観方だ。


ラッシュアワー2
Rush Hour 2

  • 2001年 / アメリカ / カラー / 90分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for action violence, language and some sexual material.
  • 劇場公開日:2001.9.16.
  • 鑑賞日:2001.9.30./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘9/ドルビーデジタル
  • 公開2週目、土曜日のレイトショウ。240席の劇場は満席。
  • プログラムは600円、キャストのインタビューなど定番の内容。
  • http://www.rushhour2.net/ スタッフ&キャスト紹介、スクリーンセーバーなど。面白いのは日本での配給元GAGA宣伝部員の週報。更新は29日付で終わってしまいましたが、7月半ばからこのサイトをやっていたんですね。全米公開前からサイト運営していたとは、気合の入りが伺えます。