チアーズ!



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

5年連続全米選手権優勝の高校チアリーディング部トロスのリーダーになったトーランス(キルスティン・ダンスト)。ところが先代からの振り付けは強豪ライバル、クローヴァーズからの盗作と判明。選手権まで残りわずか。トロスは新しい振り付けを完成させて、クローヴァーズと正々堂々と闘えるのだろか。


チアリーダー、と言われても、僕なんぞ若い女性がキャァキャァ応援するぐらいのイメージしかなかった。しかしこの映画を見てがらり印象が変わった。彼女達は本当は優れたアスリートだったのだ。


軽薄短小な若者向けコメディが多い中、この映画も一見そうと思わせて実は正統派スポ根コメディという作り。特別に傑作とかではないけれど、笑いのツボを的確に押えつつヒロインの奮闘振りを中心に据え、転校生との友情やその兄貴であるオタク同級生とのロマンスも適度に塗しながら、1時間半という適性な上映時間にまとめ上げた2人の新鋭、監督ピートン・リードと脚本家ジェシカ・ベンディンジャーの目を称えたい。


映像ではやはりアクロバティックなチアに目を奪われる。バク転、バク宙は当り前、男性が女性を空中にクルクル放り投げたり、仁王立ちとなった男性が女性を自分の胴周りでブン回したり、音楽に合わせてのその激しい動きとスピードは圧巻。スクリーンにて映し出される鍛え上げられた肉体の動きを見るにつけ、この映画が人間の肉体賛歌でもあると分かる。その賛歌も、スター映画によくあるナスシシズムや誇示とは一線を画す、雄弁でありながら饒舌でないという趣。いや確かに劇中に登場する身体は皆、本当に引き締まっている。でも飽くまでも空気のように”さりげなく”の範疇なのだ。謙虚な肉体派映画と言えようか。


謙虚でありながら、原題が示す通り「やっちまえ!(Bring it on!)」とばかりに演技を謳歌する姿。クライマクスの選手権における、トロスとクローヴァーズらの闘いも、相手をのしてしまおうとかより、自らのベストを尽くそうとする姿勢が、感動と言うと大袈裟だが清涼感さえ呼ぶ。これが青春ものであるこの映画にマッチしていて、より好印象を与える原動力となっているのだ。


ベストを尽くすという姿勢基本はクライマクスだけに収まらず、劇中で登場人物達が取る行動の根底にあるものだ。トーランスらは自分たちで演技を組立上げようとするし、マイノリティであるがゆえに資金が不足して出場が危ぶまれるクローヴァーズもそう。トーランスは何とかお金を工面してクローヴァーズ出場を取り図ろうとするのだが、クローヴァーズ側は頑として撥ね付ける。ライヴァルの同情ではなく、自力で解決しようとする傍目には頑迷とさえ見えるこの態度に、アメリカ人らしさを見た。


キルスティンも熱演だし、『トゥルーライズ』(1994)でシュワの娘役だったエリザ・ドゥシュクの美しい成長も驚きだが、クローヴァースのリーダー役ガブリエル・ユニオンが特に目を引く。強い意志を持ちながら柔軟な先導者として、魅力を放っている。


チアーズ!
Bring It On

  • 2001年/アメリカ/カラー/98分/画面比1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for sex-related material and language.
  • 劇場公開日:2001.8.4.
  • 鑑賞日:2001.8.11./シネマライズ2F/ドルビーデジタル
  • 公開2週目、土曜昼の回、渋谷の303席の劇場はほぼ満席。客層は10代〜20代の女性が半数以上。
  • プログラムは700円。チアリーダー座談会があるが、もっと分量が欲しい所。
  • 公式サイト:http://www.cheersmovie.com/ カラフルな色彩にFlashを多用、クイズやゲーム等もある、見た目も中身も賑やかなサイト。