ジュラシック・パークIII



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の舞台となった孤島サイトB。そこで行方不明になった息子を探すために、富豪の夫妻(テア・レオーニ、ウィリアム・H・メイシー)はグラント博士(サム・ニール)らをガイドに、恐竜が支配する恐怖の島に降り立つ。


スティーヴン・スピルバーグからジョー・ジョンストンへのバトンタッチとなったこの作品(スピ氏は製作総指揮)、監督が交代した良い意味での気分転換というか、開き直りが随所に見られる仕上がりになっている。つまりは単純なSFアクション・ホラーになっていて、ひたすら恐竜襲撃の恐怖に徹しようとしているのだ。


この単純化路線に伴い、『ジュラシック・パーク)』(1992年/以降『1』、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク2』(1996年/以降『2』)での文明批判の安っぽい繰り返しを削除したのは賢明。妙な説教臭さが無くなった分、前2作揃って2時間7分あった上映時間が大幅に短くなり、1時間33分とコンパクトになった。鈍重な2時間ものが多い中、これは大いに歓迎したい。”B級”スリラーとしての開き直りとも取れ、その潔さが爽快だ。


追っ駆けスリラーとしてはまずまず合格だろう。島に着いてからは御馴染みヴェロキラプトルやT−レックスが登場、矢継ぎ早に襲い掛かって来て退屈させない。が、惜しいことに、スピルバーグにあった粘りには欠ける。『1』の中盤にあった雨の中のT−レックス襲撃シーンや、『2』の2頭のT-レックス襲撃シーンにあった、あざといまでの盛り上げがここにはない。身軽になった分、足腰の粘りまで失われたのは減点だ。


盛り上げが無いと言えば、このシリーズ、どれもクライマクスが弱い。まぁ、恐竜が襲い来るだけなので致し方無いのかも知れないが、こちらの想像を絶するクライマクスを用意してもらえないものだろうか。それがクリエイターたるものだろう。


今回の目玉はT−レックスよりも巨大で凶暴な、背びれ付きの肉食竜スピノサウルス。こいつが探索隊メンバーをしつこく付狙うのは、『JAWS ジョーズ』(1975)のスピルバーグ的か。しかしそこはジョンストン、スピルバーグに無い別のこだわりを見せる。飛翔への執着を見せる彼が、翼竜プテラノドンを活躍させるのだ。『1』の原作にあって今まで映像化されていなかったシークエンスの待望の映像化だ。こやつは悪役として登場なので、いつもの爽快感に欠けるのがジョンストンとしては異質だろうか。


拝借といえば、ジョン・ウィリアムズのテーマ曲をやたら聴かせるドン・デイヴィスの手腕には疑問符が付く。元々デイヴィスは明確なメロディが目立つ作曲家でないのは確かだが、やたらめったら他人のテーマの曲を大仰に流すのもどうかと思う。


『1』で恋人同士だったグラントとエリー(ローラ・ダーン)のその後や、富豪夫妻の仲など、簡素ながらB級スリラーとして手際の良さが見える必要十分な人間ドラマ。普段は情けない役が印象的な我らがメイシーさんが、終盤にちょっとガッツを見せてくれ、思わず嬉しくなったりする。この映画を観て得した気になるとしたら、ハリウッド大作娯楽映画でまさかの活躍をするウィリアム・H・メイシーを観る喜び、などと言ったらちょっと贔屓過ぎるかな。


それでもこのシリーズ、もういい加減ネタ切れ、打ち止めにしても良い頃合いだろう。いくら新種の恐竜を出しても、孤島で恐竜に追われる人間という基本プロットが変わらない限り、これ以上新しい要素が観られるとは思えない。今回もそれなりに楽しんだのだから、引き際は格好良くして良いと思う。


でも、これ観て気に入ったスピルバーグは、『4』の製作を決意したそうな。


ジュラシック・パークIII
Jurassic Park III

  • 2001年 / アメリカ / カラー / 93分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for intense sci-fi terror and violence.
  • 劇場公開日:2001.8.4.
  • 鑑賞日:2001.8.4./ワーナーマイカルシネマズみなとみらい1/DTS
  • 公開初日夕方4時30分からの回、210席の劇場は満席。
  • プログラムは500円。他社の600円以上が珍しくない今、最近のUIPは価格据置で頑張ってます。恐竜関係の文章・図解、プロダクション・ノートが充実しているのはこのシリーズならでは。作曲家ドン・デイヴィスに2ページ割いているのはマニアック。
  • 公式サイト:http://e.goo.ne.jp/JP3/ 壁紙、予告編など。定番の恐竜の大きさ比較もあり、登場する恐竜がいかにデカいか良く分かります。