ラマになった王様
★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。
大金持ちの鼻持ちなら無い若き王様クスコは老魔女ヤズマの手によりラマにされ、人間に戻るべく心優しい農夫パチャと冒険を繰り広げる。死んだと思っていた王様が生きている、と知ったワル者どもの追撃をかわしながら。
いつもより寓意は控え目なディズニーアニメの小品である。
この作品、これを爽快と言わずして何と言おうか。王様とパチャとの間にやがて芽生える友情物語もありきたりとは言え良いし、単純なプロットや愛すべきキャラクターが78分にギュッと圧縮され、スピード感が楽しめる。
日本公開に際しては字幕版無しの吹替え版のみ(クスコ役は藤原竜也)、派手な宣伝もない。大人向けとして鳴り物入りだった『美女と野獣』(1991)以前のディズニーアニメの公開方法に戻っている。
原語版での方針も子供向けなのだろう、近年のディスニーアニメと違い大物映画スターの起用もない。それが功を奏して、上手い役者ばかり揃えて鈍重な作りにならず、内容も肩の凝らない軽快なギャグ連発路線。そのギャグも、『トムとジェリー』等でクレイジーさを撒き散らしていた故テックス・エイヴリーに近いナンセンスな騒々しさ。ディスニーらしからぬ作品という点では、『アラジン』(1992)を超えている。
主人公がディズニーアニメ最悪の性格なのも画期的。そして何より特筆すべき人物は、魔女の手下クロンク。間抜けでアタマが相当悪い大男、悪事よりも料理が大好きで、ヤズマの命令で悪事を働く時に内なる葛藤を繰り広げる実は優男。単純な善人悪人で塗り固めてきた同社の中で、この異色振りは突出している。
長編アニメはこれが初の監督マーク・ディンドールの若い感性で、全編ハイテンションでナンセンスな笑いを貫いている。そんな中、チャパの家庭の描写が作品に安らぎを与えているという、作りの上手さは老舗ならでは。やはり侮れない。
大作でも無いし、大傑作でも無いけれど、閉塞気味だったディズニーアニメの突破口となるかも知れない作品だ。
ラマになった王様
The Empero's New Groove
- 2002年/アメリカ/カラー/125分/画面比1.85:1
- 映倫(日本):指定無し
- MPAA(USA):G
- 劇場公開日:2001.7.14.
- 鑑賞日:2001.7.15./ワーナーマイカルシネマズつきみ野5/ドルビーデジタル
- 公開2日目の日曜昼の回、186席の劇場は7割の入り。さすがに小さい子供連れ多し。
- プログラムは500円、オリジナルキャストの紹介は一切無く、内容も子供向けを強く意識しています。
- 公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/llama/ ゲーム、壁紙などあり。無論、日本語版主題歌を歌うムーチョ・ヒデキこと西城英樹の紹介も。因みに原語ではトム・ジョーンズが歌っていたとか。どっちも濃いが、ジョーンズの方がクドさで圧勝かな?