ギフト



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

タローカード占いで細々と生計を立てているアニー(ケイト・ブランシェット)は、教師ウェイン(グレッグ・キニア)の若い婚約者ジェシカ(ケイティ・ホームズ)行方不明事件に巻き込まれる。アニーは予知能力を持っていて、他人の過去・現在・未来を見ることができるのだ。しかしそのヴィジョンは、全てを見通せる訳ではなかった。


一見ホラー/スリラーのこの作品、人間性の救いを断固支持していて、意外にも温かみのある作品になっている。中盤が法廷ものになったりでプロットにややまとまりを欠くものの、ミステリと人物描写を中心したビリー・ボブ・ソーントンとトム・エパーソンの作家振りは、中々感心させられる部分もある。


ヒロインのアニーは単なる占い師ではない。凶暴な夫ドニー(キアヌ・リーヴス)に虐待されているヴァレリーヒラリー・スワンク)や、精神に深い傷を負ったバディ(ジョヴァンニ・リビシ)らのケアをするセラピスト的役割も担っている。この映画の主要登場人物は、殆どが心に傷を負っているのだ。アニーの長男は、1年前に起きた父親の事故死により、心を閉ざしている。そのアニーも、実は夫の事故に向き合うことが出来ていない。


サム・ライミの演出は、アメリカ南部の鬱蒼とした沼地の気配を湛え、そこに人間の闇を重ねる、情景描写と心理描写を一体化させたもの。白く冷たい雪に寒々した心象をだぶらせた『シンプル・プラン』(1998)と同様の手法だ。時折挿入されるショッキングなケイトのヴィジョン以外、『死霊のはらわた』シリーズなどのヤンチャな姿勢が見られないのは少々寂しい。それでもこの作家としての成熟振りはどうしたことだろう。着実な手さばきで、時折物語が拡散しそうになるギリギリの所で踏み止まる。


この種の作品に珍しく豪華なキャスティングの中で、やはり一際目を引くのはケイト・ブランシェットだ。『エリザベス』(1998)の女王、『理想の結婚』(1999)の超真面目が可愛い貞淑な妻、『狂っちゃいないぜ』(1999)のカリフォルニア主婦、『リプリー』(1999)の富豪の娘、とどれも全く違う顔を見せてくれる。今見ていて一番楽しい女優に違いない。今回は、貧しい中で3人の子供を育てている生活感を出し、孤独や葛藤を見せ、温かみを忘れない。薄い顔立ちが超能力者に似つかわしいのに、非常に人間臭い演技。それを自然に表現するのだから、本当に素晴らしい。


脇役では特にジョヴァンニ・リビシが好演。驚きだったのはキアヌ・リーヴス。この人、能面に棒読みの台詞回しなので、今までは役者としては全く買っていなかったのに、長髪・髭面・汚い言葉遣いの粗暴で無教養なホワイトトラッシュの典型を演じ、これがはまり役だったのだ。


ケイト・ブランシェットビリー・ボブ・ソーントンは『狂っちゃいないぜ』で共演し、ソーントンは『シンプル・プラン』に出演して場をさらい、検事役ゲリー・コールも『シンプル・プラン』に出演、と各人のリンクに思いを馳せるのも楽しかった。そういやブランシェットとソーントンは、ブルース・ウィリスと『バンディッツ』というクライム・コメディでも共演するだそうな。


お楽しみはまだまだ続きそうだ。


ギフト
The Gift

  • 2000年 / アメリカ / カラー / 111分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for violence, language, and sexuality/nudity.
  • 劇場公開日:2001.6.16.
  • 鑑賞日:2001.6.16./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘8/ドルビーデジタル
  • 公開初日、土曜日レイトショー。238席の劇場は6割の入りだった。
  • プログラムは600円。文字が少なく内容が薄いのでちと割高です。
  • 公式サイト:http://www.gift-movie.com/ 鬱蒼とした感じが良く出ているサイト。粗筋紹介、キャスト・スタッフ紹介など。予告編・壁紙などあり。