ハムナプトラ2/黄金のピラミッド



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

あれから8年後、リック(ブレンダン・フレイザー)と考古学者イヴリン(レイチェル・ワイズ)は目出度く結婚、8歳になる息子にも恵まれていた。両親が冒険好きであんなんだから、息子もしかり。でも無鉄砲だったリックが家庭第一に落ち着き、逆にイヴリンが冒険マニア(お宝マニア?)になっているのが可笑しい。とまれ彼らが謎のブレスレットを手に入れたことから、家族3人して大冒険に巻き込まれることになる。


「ヘンだ」「憶えにくい」「いや、原題の”ミイラ”より分かり難くくて、かえって良い」、などと賛否あった邦題の『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(1999)。それの続編は意外なことに真っ当な、正真正銘の続編だった。単純に同じキャラ総出演かと思いきや、物語的にも前作がかなり絡んでくる。その絡み方がこれまた意外にも絶妙なのだ。1作目を未見の方は、ビデオ等での予習をお勧めする。


前作でミイラとして蘇り暴れまわった高僧イムホテップ(アーノルド・ヴォスルー)に、イムホテップの恋人アナクスナムン(パトリシア・ヴェラスケス)の古代エジプト悪人コンビ、イヴリンのダメ兄貴ジョナサン(ジョン・ハナー)、正義の戦士アーデス(オーディット・フェール)らが総登場。スタッフも前作と殆ど同じメンバーで揃えている。
今回の目玉はニューキャラ、スコーピオン・キング(人気プロレスラーのザ・ロック)。冒頭の古代エジプト時代の大戦闘シーンで暴れ、クライマクスでも暴れまくるが、本人自身の出番はちょい少ない。


この映画の特徴は、とにもかくにも物量作戦。アクションに次ぐアクション、特撮に次ぐ特撮の目まぐるしい展開。全編これ見せ場・山場だらけで、谷間無し。飽きさせない点では前作以上である。前作のスティーヴン・ソマーズ演出には、オープニング15分以外は特に冴えを感じなかった。脳天気で陽性な演出は好感が持てるものの、どうもにも締まりが無い。その締まり無さを救っていたのがジェリー・ゴールドスミスのタイトなスコアでだっが、今回はゴールドスミスが登板拒否をした為にアラン・シルヴェストリが登場。だから御大の音楽が無いので観る前は心配だった。ところが己の弱点を知っての上か、今回は急テンポで見せ場のみの展開と、特撮の物量作戦が功を奏していた。今回のベスト場面は、2階建てバスでのミイラ3人とのアクション。ここは工夫された道具立てが宜しい。ここでもミイラの不気味さは益々陰を潜め、ホラーテイストは殆ど払拭されていた。完全に家族連れで楽しめるアクション・アドベンチャーになっている。


展開の粗っぽさと御都合主義は、この映画では許そう。「こんなんなって、一体どう助かるんだろ!?」と思って観ていても、次の場面では主人公たちは何事も無かったようにピンピンしている。「んなアホな」と突っ込むのは無駄というもの。ブレンダン・フレイザーはがっちりした体格で結構ハンサムなのに、愛嬌のある顔をしているので、観ていて安心感がある。インディ・ジョーンズならば本当にやられてしまいそうな展開も、マンガっぽいルックスの彼ならば許されるのだ。


冒頭の古代エジプトでの合戦場面といい、後半に登場の人食いピグミーのミイラ軍団といい、クライマクスに登場の頭部がジャッカルの邪神ミイラ軍団との合戦といい、CGIモンスターの物量は前代未聞。特に邪神軍団対人間軍団の戦いは、互いに数千単位の大合戦というものすごい数。注意して見ると作り込みが若干粗いのが、そこはこの作品全体のテイスト。とにかく数・量なのだ。前作と似た場面も、他の作品で観たような場面も、CGIでボリュームアップ。ヒヤヒヤするようなスリルは少なくとも、ある意味安心して観られる作りになっていて、それは製作側の狙いに沿ったものと言えそうだ。


観客へのサービスは特撮のみならず徹底していて、前作のキャスト総登場に始まり、各キャラがさらなる大活躍、果てはアナクスナムン対イヴリンの女チャンバラまであるのだから恐れ入る。


ブレンダンは手馴れたもの。レイチェル・ワイズは前作のコミカル演技に違和感を感じたが、板に付いてきた。でも残念、彼女は『3』に出演しないとか。


前述したシルヴェストリのスコアは、ゴールドスミスが作曲したテーマを一切使わず新たに作られたもの。テーマとなるメロディは幾つかあるものの、バックのブラスに埋もれてしまい輪郭不鮮明。そのブラスも、数は鳴っていてもメリハリに欠け、大味。これも作品を象徴している。


この映画最大の驚きはメインタイトル。”The Mummy Returns”と出てくると、「そうだったなァ」と思ってしまった。どういうことか、まぁ現物をご覧あれ。凝ったデザインはやはり前作と同じイマジナリー・フォーシズが担当している。


細かいことはとやかく言わず、どでかい丼ものとして、ボリュームとサービスを楽しむ作品、との割り切りが肝心だ。


ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
The Mummy Returns

  • 2001年 / アメリカ / カラー / 129分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for adventure action and violence.
  • 劇場公開日:2001.6.9.
  • 鑑賞日:2001.5.26./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘1/SDDS
  • 土曜夜10時50分からの先々行レイトショー。452席の劇場は3〜4割の入りだった。
  • プログラムは500円。内容は、まぁ無難なところ。本国での公開と日本公開との間隔が余り無かったので、余り細かいところまで突っ込めなかったのか、子供連れにはこれ以上の価格設定は難しいということなのか。大作は600〜1000円のものが多い最近の風潮の中で、この価格が久々なのも問題かと思いますが。
  • 公式サイト:http://www.odn.ne.jp/uip/mummy2/index.html プロダクション・ノート、スタッフ・キャスト紹介、予告編、ゲームなどがあります。ゲームは人食いピグミーを殺しまくる(笑)もの、イムホテップの迷路からの脱出、リックになって敵をノックアウトするものと3種類。ピグミーは何故かローディングが上手くいかず、迷路をやってみました。それなりに面白いのですが、コントロールが難しい。
  • ファン・サイト:http://www.kousyou.com/cinema/mummy/ レイチェル・ワイズのファンサイト(こんなん日本にも出来たようです)へのリンクあり。