タイタンズを忘れない



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

1971年ヴァージニア州アレキサンドリアでの実話。黒人学校と白人学校の統合により生まれた高校に、アメフトチーム”タイタンズ”のヘッド・コーチとして、黒人のブーン(デンゼル・ワシントン)が赴任して来る。互いに反目する黒人と白人の生徒達。ブーンは人種に区別無く全員に厳しく、鬼軍曹の如く鍛え上げる。やがて生徒達は打ち解け合うが、周囲はそう変わるわけでもない。そんな状況を撃破するかのように、タイタンズの連戦連勝が始まる。


1971年というと僕が生まれた年だ。首都ワシントンに近い町でも、異人種同士の共学が物議を醸したという事実は、個人的にちょっと驚きだった。


この映画は全くアメリカ的と言える。自らの正当性を認めさせるには、結果を出して勝ち続けるしかない。勝って勝って勝ちまくって、レイシズムを力でねじ伏せるしかない。ゲームに負けることは、自らの主張の負けを意味するのだ。陰ではブーンは1ゲームでも負けたら解雇、元のヘッド・コーチだった白人ヨースト(ウィル・パットン)に挿げ替えられる取り引きがあった。不当だが、背景からすると当然なのだろう。普段は強硬さが目立つブーンでも、初陣を前にして人知れず吐く場面が印象的だ。


デンゼルの力演はすっかり御馴染みだが、この映画で一際素晴らしいのはウィル・パットンの助演だ。ヘッドの座をブーンに奪われて守備コーチに降格される役所なので、僕なぞてっきり『エントラップメント』(1999)のようなネチネチ演技になるのかと思っていた。でも今までもジェリー・ブラッカイマー作品では、何故か良い人役が多いのだ、この人は。『アルマゲドン』(1998)しかり『60セカンズ』(2000)しかり。この映画では生徒たち思いのコーチを、控え目に演じている。苦労や悩みもさり気なく漂わせながら、時にブーンと対立。最後にブーンと完全に和解するくだりで、この映画は生徒たちだけではなく、ブーンとヨーストの和解がテーマでもあると気付かされる。


器はリッパでも中身はガサツなのが定番のブラッカイマー作品でも、今回は珍しく好感を持った。ボアズ・イェイキンの演出は的確で、節度があり、深みには欠けるものの、印象的な場面も幾つかある。奇をてらう派手なショットが1つも無いのも良かった。ブラッカイマーが起用する監督はCFやMTV出身のトンチキが多いので、物語にあった語り部に徹しようとするイェイキンの姿勢は評価出来るものだ。


この映画最大の驚きは、ブラッカイマー作品にも関わらずいつものタッチストーン映画ではなく、ウォルト・ディズニー映画であること。まぁタッチストーンはディズニー子会社なので、変わらないと言えば変わらないか。”政治的に正しい”ファミリー向け映画だとの主張なのか、ブラッカイマーのイメチェンなのか。


タイタンズを忘れない
Remember the Titans

  • 2000年/アメリカ/カラー/113分/画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG for thematic elements and some language.
  • 劇場公開日:2001.4.28.
  • 鑑賞日:2001.5.2./渋谷ジョイシネマ/ドルビーデジタル
  • 公開数日後、GW中の水曜日(東京では映画の日)昼の回。232席の劇場はほぼ満席だった。臨席の母娘(娘さんは20代)が仲良さそうに観ていて、後半でお母さんの涙と鼻をすする音が微笑ましい、ゴールデンウィークの一コマであった。
  • プログラムは500円。こちらもスタッフ・キャストのプロファイル、解説、プロダクション・ノート等、堅実な内容。日本では黒人が主役のデンゼルでは人が入らないということなのか、ポスターやプログラムで大きく取り上げられているのが、転校生役キップ・パルデュー。長い金髪に中々のハンサム・ガイですが、首が異様に太い。と思ったら、本当にアメフト選手だったそうです。
  • 公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/titans/ 予告編、プロダクションノート、スタッフ・キャストのプロフィールなど。サントラ紹介ページでは、1曲のみ試聴可。どこのページみてもキップ・パーデューの顔ばかり。