ショコラ



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


粉雪舞う北風と共にフランスのある村にやってきた母娘。赤い頭巾とマントの2人がやってくる様にナレーションが被る冒頭から、この映画が寓話仕立てであることが分かる。母親が始めたチョコレート屋は、古くからの因習にとらわれている町の人々の心を溶かし、開放していくのだろうか。そして封建派のリーダーである伯爵との対決やいかに。町から町へ、村から村へ渡り歩いてチョコレート屋を営んできた母娘が、伯爵との対決に破れ、またここを去るのか。映画は意外にもサスペンスもはらんでいく。


ラッセ・ハルストレムが『サイダーハウス・ルール』(1999)に続いてミラマックス映画と組んだ新作『ショコラ』は、観ていて楽しい映画だ。しかしこの軽めの微笑ましい寓話に、上映時間2時間は長いのではないか。ハルストレムの長所は登場人物に対する暖かな眼差しだ。その眼差しがこの作品に合っていても、もう少し軽めの演出がより似つかわしい。『サイダーハウス〜』で美しい音楽を提供していたレイチェル・ポートマンが、ヴァイオリンに木管、ギターと絡ませ、軽めで賑やかな曲を付けてはいるのだが。ハルストレムに映像の躍動を求めるのは畑違いだろう。


脇役陣の豪華さも軽さを引き下げているように思える。ジュディ・デンチキャリー=アン・モスレナ・オリンアルフレッド・モリナピーター・ストーメアと、きちんと演技が出来る人を揃え過ぎた。いや、彼らは各人味のあるところを見せているのだが、中にはコメディというより深刻な演技が目に付く。その中で主役のビノシュは、いつもの鼻につく「私を見て!上手いのよ」演技を見せず、肩の力を抜いて魅力的。また彼ら殆どがヨーロッパ出身なのに対し、中盤から登場する流れ者にアメリカ人であるジョニー・デップを配役したのは成功している。妙に重ためのキャスティングに軽さを運んでくれて、久々に格好良い役どころだった。


色々難点はあるし、傑作とかではないが、『ショコラ』は大いに楽しめる作品ではある。笑いあり、ドラマあり、ロマンスあり、内容もりだくさん。チョコがいっぱい入ったバスケットのようだ。鑑賞後に劇場でチョコが買えるようだと良かったのになぁ。


テリー・ギリアムニール・ジョーダンの作品で印象的な仕事をしていたロジャー・プラットの撮影は、殆どモノクロのような序盤から暖色系へと変えていき、文字通り寓話に彩りを加えていたことを付け加えておこう。


ショコラ
Chocolat

  • 2000年 / アメリカ、イギリス / カラー / 121分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for a scene of sensuality and some violence.
  • 劇場公開日:2001.4.28.
  • 鑑賞日:2001.5.5./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘5/ドルビーデジタル
  • 公開1週間後、GW中の土曜日レイトショー、164席の小劇場は満席だった。
  • プログラムは600円、チョコいっぱいの表紙のデザインが食欲をそそります。昨年の『サイダーハウス・ルール』もそうですが、アスミック配給の映画は丁寧な作りで好感が持てます。
  • 公式サイト:http://www.chocolat-jp.com/ 予告編、上映劇場案内、プロダクションノート、スタッフ・キャストの詳しいプロフィールなど、コメディ/ドラマ映画系ではかなり充実したサイト。