僕たちのアナ・バナナ



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

ジェイク(ベン・スティラー)とブライアン(エドワード・ノートン)は幼馴染みの親友。ジェイクはラビで、ブライアンはカソリックの神父。2人は型破りな方法で信仰を広め、信者の人気も高い。そんな2人の地元に、やはり幼馴染みのアナ(ジェナ・エルフマン)が帰って来た。16年振りの再会に喜ぶ3人だが、バリバリのキャリア・ウーマンに凛々しく成長した彼女に2人の心はさざなみが立ち…。


アメリカン・ヒストリーX』(1998)の衝撃的な肉体演技や、『ファイト・クラブ』(1999)での柔軟な顔面演技など、個人的に今一番注目している若手のエドワード・ノートン。その彼の新作はロマンティック・コメディで、しかも監督も兼任とのこと。観ての結果は良い出来映えで、中々に楽しめた。


と、これは典型的な三角関係ロマンティック・コメディのプロットなのだが、そこに捻りを上手く加えているのが面白い。ジェイクは出世の為に必要な結婚のためにと、周囲から当然の如くユダヤ女性の紹介攻勢を受けてうんざりする。特に運動マニアで腹筋自慢の豪傑快女とのデートの件など笑わせてくれる。他宗教の女性と結婚した兄を未だに許さない母親(アン・バンクロフト好演)の存在もあり、難しい立場なのである。一方のブライアンはカソリック神父なので、恋愛すら許されない。「禁煙と同じでつらいのは最初だけ、後は慣れだ」などと言っているが、どうなることやら。2人とも何の疑問を持たずに順調にキャリアを築いてきたのに、そこにアナという存在が入ってくるのだ。


ベン・スティラーは『メリーに首ったけ』(1998)」のダメ主人公振りが印象的だが、今回はおかしみを漂わせながらもカリスマティックなラビを演じていて宜しい按配。ノートンも自らのとっぽい外見に合わせた演技、”真面目で可笑しい”と”ユーモラスで可笑しい”を両立させていた。


一方、アナもキャリア一辺倒の生活に疑問を持ち始めている。TVシリーズ『ふたりは最高!ダーマ&グレッグ』のダーマ役で御馴染みエルフマンは適役。決して美人じゃないのに、仕事は即断即決でバリバリこなし、からっとした明るさにユーモアも備えており、2人の心を捉えるのも納得だろう。


脚本(スチュワート・ブルムバーグ)がしっかりしているので、映画としても安心して観ていられる。人物描写も主人公3人の内面に絞り込み、脇役には適度な個性と役者の持ち味で印象付けるのも賢明だった。『アマデウス』(1984)」などの名匠ミロス・フォアマンも役者として良い味出している。原題の「Keeping the Faith」の「Faith」は”信仰””信念”の意味。宗教にたずさわる人間にとっての信仰と、個人の持つ信念の揺らぎをうまく絡めた内容にぴったりだった。


ノートンの演出は全体にユーモアの配分もよろしく丁寧、肩の凝らないリラックスしたもので、コメディ演出の仕方を既に知っている様子。舞台となるマンハッタンの観光名所的描写もわざとらしくなく、心地良い気分になれる。但し私見ではロマンティック・コメディで129分は少々長い。退屈するところは無いけれども、若干の刈り込む余地はあったのではないだろうか。それでもこれで初監督、しかも主役兼任なのだから上出来と言えよう。


余談だけど、”ラビ”は”ラーバイ”と発音するんだな。


僕たちのアナ・バナナ
Keeping the Faith

  • 2000年 / アメリカ / カラー / 128分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for some sexuality and language.
  • 劇場公開日:2001.1.20.
  • 鑑賞日:2001.2.17./日比谷スカラ座2
  • ドルビーデジタルでの上映。上映5週目土曜午後一の回、150席余の劇場は7割の入りだった。ノートンかはたまたエルフマン人気のせいか(?)、観客は女性が大勢を占めていた。
  • プログラムは600円でノートン来日記者会見の模様など収録。価格にまぁ見合っているか。
  • 公式サイト:http://www.eigafan.com/anabanana/ N.Y.のロケ地案内、予告編、BBSなどあり。