エクソシスト/ディレクターズ・カット版



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


初公開時はもの凄い反響だったという名作が、最近流行りの「ディレクターズ・カット版(以降DC版)」として再公開された。約10分の追加場面だけでなく映像をデジタル修正、音響もリミックスしてデジタル音響版となっている。監督ウィリアム・フリードキンがフィルムの画質に不満ということで、2000年秋公開直前に延期となったのも話題になった。結果的に北米のみならず日本でもヒットしたのは、「公開直前に延期」というアヤしさが、オカルト映画(死語ですな)としての格を上げたからなのかも知れない。


オリジナル版のステレオ音声をドルビーデジタルのサラウンド・リミックスしての版は、1998年秋の東京国際ファンタスティック映画祭で観ている。そのヴァージョンのDVDも所有してそちらも観ているので、オリジナル版と今回のDC版の比較も公平に出来ると思う。

詳しいストーリーやオリジナル版の評価については、『エクソシスト/デジタル・リミックス 25周年記念版』のレヴューを参照されたし。


今回のDC版ではラストに明るい場面が追加されていて、これは不要だ。善と悪の凄まじい闘いに失われたものを考えると、寂しさ漂うオリジナル版で正解ではないだろうか。また、デジタル修正による数々のサブリミナル・ショットは、映画を鑑賞する上で単なるノイズにしか過ぎない。元々徹底したリアリズムで押している為に、追加された小賢しい技巧と噛み合わず、どうにもちぐはぐな印象を与えてしまう。オリジナル版でもサブリミナルが使用されていたが、ごくわずかに留めていた。全編やられると邪魔以外なにものでもない。


総体的に追加場面は要らないものが殆どだが、エクソシズムの最中の小休止の場面は重要だろう。メリンとカラスの会話に映画の本質的な鍵があるのだ。


新たな音響効果は認めたい。25周年記念版DVDも5.1chサラウンドだが、更にリミックスし直したのが成功していて、移動感・包囲感も派手になって迫力に貢献していた。


エクソシスト/ディレクターズ・カット版
The Exorcist: Director's Cut (aka: William Peter Blatty's The Exorcist: The Version You Haven't Seen Yet)

  • 2000年 (1973年) / アメリカ / カラー / 132分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for strong language and disturbing images.
  • 劇場公開日:2000.11.23.
  • 鑑賞日:2001.1.6./渋谷東
  • ドルビーデジタルでの上映。公開後約1ヶ月の土曜朝の回、場内の座席は余裕で、453席の劇場は3分の入りだった。
  • プログラムは600円、その割に情報量はほどほど。解説ページが赤地にピンクのゴチック体で読み難し。
  • 公式サイト:http://www.exorcist-jp.com/iモード版悪魔祓いが登場!」とあるので、どなたか御試しあれ。ウィリアム・フリードキンの日本向けインタビューが笑えます。この人、かなりブッ飛んでますね。1974年公開当時の劇場の様子など、当時の宣伝部員の文章も可笑しい。内容盛りだくさんのサイトです。