ハート・オブ・ウーマン



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

大手広告代理店(ロココ調の大オフィスなんて憧れですな)に勤めるニック(メル・ギブソン)は、女性に表面上はモテモテの、その実れっきとした女性差別主義者。しかし他社から引き抜かれてやって来たダーシー(ヘレン・ハント)に、本来自分が就く筈だった地位を奪われてしまう。その晩浴室で感電したニックは、女性が考えていることが聞こえるようになってしまい、その能力を使ってダーシー追い出しを謀る。


メル・ギブソンヘレン・ハント主演の純愛ラブロマンス(?)ものとして配給会社は売り出したいこの映画、それはどうにも無理がありそう。何となく気恥ずかしい邦題の『ハート・オブ・ウーマン』は、これはこれで結構楽しめるコメディなのだ。


この映画の魅力はメル・ギブソンに負うところが大きい。自信過剰で自分中心のニックも、メルが演じれば魅力的。本来ならばこのイヤな男が天から授かった才能を悪用し、最後は成長して改心するプロットの筈。しかし演じるメルが魅力的過ぎる為、その成長の度合いが分かりにくい。これが意図的だとしたら確信犯なのだろう。ナンシー・マイヤーズの演出もメルにメロメロで、メル自身のアイディアという、序盤にある帽子と帽子掛けを使って一人ダンスに興じる場面など、バックに流れるシナトラの歌と相まって優雅に撮っている。こんな洒落っ気のある「ブタ野郎」ならば別に良いじゃないか。ルージュやマニキュア、脱毛ワックスなど奮闘して試す場面も大爆笑。ここまでバカやってくれるならばさらに好感も湧こうというものだ。この映画、完全にメルのスター映画にもなっているのである。


ナンシー・マイヤーズの過去の脚本作品である『花嫁のパパ』(1991)も『アイ・ラブ・トラブル』(1994)も未見だけど、この映画を観るとハリウッド黄金期のコメディ再生を狙ったのは一目瞭然。特にテンポの良い前半にそれが現れている。反対に後半はあと15分短くしても良かった。こういう荒唐無稽な恋愛コメディは、後半スピードアップして行った方が盛り上がるのだから。


後半が今一なのはテンポだけではなさそう。ニックと恋におちるダーシーの描き方が足りないとか、2人の恋が盛り上がらないのは実はスター2人の相性が宜しくないのでは、とかもありそうだ。ダーシーは頭脳明晰でさばさばした性格だが、心寂しい部分も持ち合わせているキャリアウーマンとして描かれている。でもそれだけじゃ大スター・メルに対抗するには分が悪い。メルと一夜を過ごして絶頂に悶える(笑 何せ女心が分かるから)マリサ・トメイとの決着の付け方など、締まりの無いエピソードもあるので、そっちを削ってその分ダーシーの性格描写に費やした方が賢明だったろう。


映画は全体に音楽の使い方がごきげんで、前述したミュージカルシーンや歌の使い方など楽しめる。アラン・シルヴェストリのオリジナル曲もユーモラスなバンド風、歌と並べて違和感がない。プロダクション・デザインも豪華だし、意外なスターのキャメオ出演など、全体には楽しめる御伽噺である。


ハート・オブ・ウーマン
What Women Want

  • 2000年 / アメリカ / カラー / 126分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for sexual content and language.
  • 劇場公開日:2001.1.27.
  • 鑑賞日:2001.1.28./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘1
  • ドルビーデジタルでの上映。公開2日目の日曜昼の回、新百合ヶ丘で最大規模452席の劇場は4分の入りだった。大雪の翌日だったから、という可能性もある(道路も空いていたし)。
  • プログラムは500円ですが、こっちの内容までモロに恋愛映画扱いなのが違和感ありあり。
  • 公式サイト:http://www.heart-of-woman.com/ 作品紹介、上映館案内、BBS、占いなど。スケジューラーのダウンロード、グリーティング・カードの送付が出来ます。