ファイナル・デスティネーション



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

高校生アレックス(デヴォン・サワ)は、離陸直前に自ら乗った飛行機が墜落する予知夢を見る。アレックスと、騒ぎに巻き込まれた6人は飛行機を降りるが、彼らの目前で飛行機は空中爆発。しかし助かった彼らにも予定通りの死を迎えさせんと、”死”が襲い出す。アレックス、アレックスのガールフレンドのクレア(アリ・ラーター)らの運命は?


随分とホラー慣れしている僕だが、これは本当に久々に(何年振りだか。10何年振り?)ヒヤヒヤした。


TVシリーズXファイル』のエピソード『スクイーズ』や『氷」など、優れた超自然ホラー作品を演出していたジェームズ・ウォンの劇映画デヴュー作。ここでは超自然現象的題材を扱いながらも、超自然現象を描写しないという芸当を見せている。日本公開用字幕で語られる死神も台詞に登場するだけで、観客も登場人物も、その姿を見ることはない。この映画に出てくるのは、日常生活を営んでいる場所での小さな事故の積み重ねが、やがて登場人物を死に至らしめる過程だ。特にある登場人物が殺される(と言って正解なのかどうか)シークエンスは、飲み物が入った使い古しのマグカップに小さな亀裂が入るところから始まり、周到に伏線が張られ、最後には包丁まで使った「念の入った」惨劇が待ち受けていて、ぞっとさせられる。


各シークェンスで凶器となるのは日常用品ばかり。キャメラも曰くありげなクロースアップやピント送りが駆使されて工夫されおり、サスペンスの盛り上げが編集共に上手いので、かなりの緊張感を強いられる。殺人鬼が出ない低予算ホラー映画でも充分恐怖を盛り上げることは出来るのだ。ここは脚本家たち(グレン・モーガンジェームズ・ウォン、ジェフリー・レディック)の着眼点を誉めたい。鑑賞直後は普段の自分の日常生活を振り返って、どんな道具を使っているか、それらの危険度について考えてしまった。


僕はリチャード・マシスンの短編小説で、日用品が襲い出すというのを思い出した。『屠殺の家』なんて題(文庫本『激突!』に収録)だった。包丁や鉛筆などが主人公に襲い掛かってくるというもの。描写の点でこちらと少々違うが、主人公だけが真相を知っているというテーマと共に、似たものを感じた。


ジェームズ・ウォンの演出は、前半ではじっくりと粘ってサスペンスを盛り上げたり、いきなりショック演出になったりで、緩急つけて惨劇場面を描いていたのに対し、後半は少々駆け足気味になっている。それに連れて恐怖が減速してしまうのが難点だ。また登場人物たちの造形に左程深みがある訳でもないが、これはそういう映画ではないから特に批判の対象として騒ぐ程でもなかろう。


この映画で一番面白いのは、主人公らが運命付けられた死を受け入れようとせずに、何とか自力で回避していこうとする姿勢。死の順番を見つけ出し、策を弄して死の先回りを企みて未然に防ごうとするのだ。このような前向きな姿勢が実は作者たちの運命論をずばり表して、いかにもアメリカ映画的で興味深く感じた。


ファイナル・デスティネーション
Final Destination

  • 2000年 / アメリカ / カラー / 98分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for violence and terror, and for language.
  • 劇場公開日:2001.1.20.
  • 鑑賞日:2001.1.20./渋谷エルミタージュ
  • ドルビーデジタルでの上映。公開初日土曜午後の回、302席は7〜8割の入り、客層は幅広かった。
  • プログラムは500円、袋とじ部分があるので何事かと期待していたら、各登場人物の死に様解説フローチャートでがっかりでした。
  • 公式サイト:http://www.final-jp.com/ アヤしいコーナーがあって笑えます。「デス・クロック」は自分の死亡占いコーナーで、質問に答えていくと、死亡予定時刻が表示されます。ご丁寧にも残り時間も秒単位で表示されて愉快。「遺言状」と題されたコーナーは、実はグリーティングカードらしく、”死の予兆占い”とやらを送り付ける物騒なシロモノらしい。友人の送る際はご注意あれ。