シックス・デイ



★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


アーノルド・シュワルツネッガーとSFアクションとの相性の良さは、『ターミネーター』シリーズや『トータル・リコール』(1990)などで証明済みだ。荒唐無稽でスケールのある内容に、どことなく荒唐無稽でスケールと愛嬌のある肉体がマッチしているのだ。しかし『Mr.フリーズの逆襲/バットマン&ロビン』(1997)以降低迷を続けているのも、実はスターとして結構好きな人間としては少々心配なところ。ロジャー・スポティスウッド監督の新作SFを観ても、その心配が晴れることはなかった。


ここ数年注目されているクローン技術を扱ったアイディアはまぁまぁとして、この映画、詰まるところ腰が弱い。この映画も後半のお約束な展開が、退屈しない程度に面白くないのだ。


序盤は結構イケそうだった。


クローン・ペットはOKでもクローン人間は法律禁止の近未来、という舞台設定は納得のいくもの。むしろ近未来都市の光景や、ヴァーチャル・ガールフレンド(笑)などの小道具類が大挙登場し、こういったSFマインドのくすぐり方は久々なだけに好感を抱かせる。要所で活躍するリモコン操作可能なジェット・ヘリの特撮が、ビデオ合成に見えてチャチなのはご愛嬌。帰宅すると自分のクローンがいて、そこにいきなり謎の殺し屋連中に追っ駆けられる出だしはスリリングでテンポも良く、掴みは上々だ。優秀なクローン技術者である良心的な博士(ロバート・デュヴァル)に、裏で操るビル・ゲイツ似の大物社長(トニー・ゴールドウィン)が絡み、さぁお手並み拝見といこうではないか。


殺しても殺しても生き返る殺し屋連中、というアイディアはSFアクションらしく面白いが、この映画の面白さはその程度まで。アイディアを出したところで製作者達は安心したのだろうか。終盤は予想通りシュワ2人で悪と闘う展開にも失笑を禁じ得ない。闘うにしても何か工夫が無いと。劇中に登場する、素の固体に特定人物の外見と記憶を全てコピーすることにより不老不死になれる技術が、実はクローン技術より格段上なのではないかという矛盾も気になる。こういった半端な個所が目に付くのだ。


また、クローン技術の倫理的側面への突っ込みも浅い。クローン人間が「不老不死はもういい、死なせてくれ」と訴える場面はあるものの、全体的にはクローン人間を製造してもOKと受け取れる内容になっている。それならそれで、もっと突っ込んだ意思表明が欲しい。結局のところ、「クローン技術をネタにしただけの単なる娯楽映画」の範疇を出ていないのだ。


弱いのは脚本だけではなく、演出もパンチが足りない。脚本が中途半端なら強引な演出でもっていけば良いものを、スポティスウッド監督ではちょい違ったようだ。場面の間に入る都市風景の細切れインサートも、うるさいだけで効果無し。センスがない。


シュワはいつも通りのシュワで通していて、果たして彼が主演する必然性があったのか疑問だ。皆が彼に期待するのは豪快さだろう。この程度のちんまりした内容ならば、身体が動く他の役者でも良かったのではないか。自慢の太い腕を持て余し気味なのが、スターとしての現在の彼自身を象徴していたように思えた。


シックス・デイ
The 6th Day

  • 2000年 / アメリカ、カナダ / カラー / 123分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for strong action violence, brief strong language and some sensuality.
  • 劇場公開日:2000.12.16.
  • 鑑賞日:2000.12.30./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘4
  • ドルビーデジタルでの上映。公開1週後の土曜夜レイトショー、175席の場内はほぼ満席。
  • プログラムは600円で、最近のこの値段だとモノクロページ有りも珍しくない中、オールカラーで頑張っています。
  • 公式サイト:http://www.eigafan.com/6d/ 動画も多いかなり派手で大掛かりなサイト。定番のスクリーンセーバーのみならず、オリジナル・ブラウザまでダウンロード出来ます。誰か試してみて下さい。