バーティカル・リミット



★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


山岳地帯を舞台にしたサスペンス・アクションの大作で、お正月映画の目玉の1つ(この程度の映画が、というのも寂しいが・・・)。


プロットは極めて単純。K2でのクレバス事故で遭難した妹(ロビン・タニー)ら3人を救うべく、兄(クリス・オドネル)が救出隊を率いて向かう話。こういったアクションものではプロットが単純なのは一向に構わない。スリルが直線的に盛り上がるからだし、単純化した分、細部のリアリズムなどの要所で工夫してもらえれば結構だ。


ところがこの映画を観ると、製作者にはそこまでの神経は無かった様子。ニトログリセリンの余りにぞんざいな扱いには苦笑するしかないし(やれやれ、何が何でもサスペンスを盛り上げたいんかいな!)、救出した人数よりも途中で命を落とした人数の方が遥かに多い始末(『プライベート・ライアン』?)。ビル・パクストン演ずるこういう映画で決まって出てくる悪党金持ちも、3万年前からのワン・パターンそのものだ。兄妹の確執や葛藤にも踏み込んでいないために、最後のカタルシスや感動も薄い。


監督のマーティン・キャンベルは『007/ゴールデンアイ』(1995)、『マスク・オブ・ゾロ』(1998)などの中堅監督。どちらもそこそこ楽しめる作品だったが、今回はそれらよりもかなり落ちると言わざるを得ない。いや、その場その場は面白い場面はある。冒頭のロック・クライミング事故や、中盤のヘリから崖っぷちに飛び移ろうとする場面、斜面を滑って崖から落ちそうになる場面などは、かなりハラハラさせられる。でも全体としては薄味と言わざるを得ない。これはロバート・キングとテリー・ヘイズのご都合主義な脚本によるところも多いが、演出にももう少し馬力が欲しかったところ。特に予告で「おぉ」と思わせた離れた断崖絶壁へと飛び移る映像なんて、「あれだけだったの?」と思わせるあっさりした扱いだ。


そもそもの不満は、何故こういった壮大な自然を舞台にした作品にスコープを採用しなかったのだろう、ということ。風景を雄大に撮るのであれば、絶対に縦横比2.35:1のスコープだ。ところがここでは1.85:1を採用している。横長画面の構図を使い切れる自信が無かったのかいな? 上記キャンベル作品は両方共スコープだったのに、かなり謎。これだけでもかなり損をしているように思える。


かつては頭悪そうな甘ちゃんぽかったクリス・オドネルが、少々精悍な面持ちになったという収穫はあったものの、全体にはかなり雑な映画と断ぜざるを得ない。


バーティカル・リミット
Vertical Limit

  • 2000年 / アメリカ、ドイツ / カラー / 124分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for intense life/death situations and brief strong language.
  • 劇場公開日:2000.12.9.
  • 鑑賞日:2000.12.9./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘4
  • ドルビーデジタルでの上映。公開初日のレイトショー、175席の劇場は満席だった。
  • プログラムは600円、登山家達の座談会が興味深く読めます。
  • 公式サイト:http://www.spe.co.jp/movie/verticallimit/ 予告編2種、クイズ・ゲームなどがあります。