レインディア・ゲーム


★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

自動車泥棒で服役しているルーディ(ベン・アフレック)と独房仲間のニック(ジェームズ・フレイン)は、あと2日で出所するところ。ニックは文通相手で、未だ見ぬアシュリーとの出会いを心待ちにしている。ところが刑務所の暴動でニックは呆気なく死に、ルーディだけ出所することになる。雪の中、刑務所の門に来ていた美女アシュリー(シャーリーズ・セロン)に声を掛け、ついニックと名乗ったことから、彼は事件に巻込まれて行く。


何故、この作品の監督がジョン・フランケンハイマーでないといけないのか?
その疑問は最後まで解けなかった。


レインディア・ゲーム』は、『隣人は静かに笑う』(1999)、『スクリーム3』(2000)の脚本家として注目を浴びている、アーレン・クルーガーという今年28歳の若手ライターによって書かれている。


冒頭、あちこちにサンタクロースの死体が五つ、雪の中に散らばっている。あるものは車のフロントグラスに頭から突込み、あるものはどてっ腹に穴を空けられて雪に転がり・・・。一体何が起きたのか? わくわくさせられる導入部だ。


見るからに善人のベン・アフレックは、持ち前のタフさとユーモラスさを発揮して、この映画の魅力の一つとなっている。いや、実際のところ、彼がアシュリーのガラの悪い兄貴ガブリエル(ゲイリー・シニーズ)らに散々痛め付けられるので、ユーモラスでなかったら観ていられないだろう。その意味では好キャスティングだ。


そのガブリエルは、妹の文通相手ニックがかつてカジノで働いていたことを知り、悪さを企てたという設定。ニックから警備情報を聞き出し、そのカジノを襲撃しようというのだ。ルーディは自分がニックじゃないと名乗れば殺され、内部情報を話さないとやはり殺されると悟り、嘘八百を話す羽目に。ここが前半の面白いところ。アフレックの軽さである、下手に深刻にならない個性が発揮されていた。一方、シニーズは憎たらしい悪役をいかにも楽しげにやっている。ロングヘアーに筋肉ムキムキと、役作りも面白かっただろう。

この映画最大の問題は、クルーガーのシナリオ。これの出来がよろしくない。物語が二転三転四転五転するのだが、観客を驚かすために話しをこしらえた感が強く、辻褄が合わないことおびただしい。基本的な「物語を語る」という点で、この映画は失格ではないだろうか。さらには小道具の使い方もあざとすぎて、30分先が見えてしまう。


名匠ジョン・フランケンハイマーにも問題がありそうだ。先の『RONIN』(1998)で馬力のあるところを見せ、大ヴェテランもまだまだ大丈夫と思わせた人。骨太で重厚な男性派、硬派な大作が得意な監督だが、これは監督の人選ミス。もっと軽さ・粋さ・遊び心を持った監督を選ぶべきだっただろう。余り得意でない内容の為か、カジノ襲撃シーンなどのアクション場面でさえいつもの切れが無い。やはり彼には剛速球の直球勝負な作品が相応しい。


幸いなことに上映時間は104分だし、観ている間は退屈はしないし、人によってはダマされるだろう。それでもビデオで充分な映画だ。


レインディア・ゲーム
Reindeer Games

  • 2000年 / アメリカ / カラー / 104分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for strong violence, language and sexuality.
  • 劇場公開日:2000.7.1.
  • 鑑賞日時:2000.7.7.
  • 劇場:渋谷パンテオン ドルビーデジタルでの上映。金曜午後の回、1119席の劇場は2割程度の入り。
  • 公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/reindeergames/index.html