ブレア・ウィッチ・プロジェクト



★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


「何でも見せてしまえ」攻勢が幅を利かす咋今の映画界において、その対象を殆ど見せない、一風変わったホラー映画を観て来た。


ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と題された数百万円の超低予算映画は、北米で1億ドル以上の興収を上げた。北米で今夏に公開されたときには、映画や公式サイトの内容の真偽を巡ってかなり話題になったようだ。だが日本での公開時では、既に偽ドキュメンタリなのは承知済み。それを知った上で観て面白いかどうか。公開初日、コギャルで満席の渋谷パンテオンにての鑑賞だった。


「魔女伝説をドキュメンタリにすべく森に入った学生たちが行方不明になる。この映画は1年後に発見されたフィルムを編集したものだ」という、観客の好奇にさらすにうってつけの設定が、超低予算を逆手に取って頭脳的だ。実際、映画に映っているのは徐々に恐怖に侵されていく3人の学生と、手ぶれのひどいフィルム及びデジカメ映像。森に奥深く入った彼らは、やがて身も凍る戦慄の体験をする羽目になる。


彼らは木に囲まれた巨大な密室に閉じ込められ、精神的に追い詰められる。夜になると不気味な声が聞こえ、テントの外側には何物かがいる様子。森で学生たちが何を見たのか(あるいは何も見なかったのか)、観客は想像するしかない。


知能犯的に作られた映画は、TVシリーズツイン・ピークス』のように作品世界を楽しむのが筋だろう。実際、Webサイト、関連本、既に北米で発売済みの特典付ビデオなど、手掛かりはあちこちにある。でも真相に辿り着くことは出来ない。これらは観客の飢餓感を煽るだけなのだ。


こういった巧妙なマーケティングに対して非難の声もあるようだ。でも個人的にはそれも構わないのではないか、と思う。作品の出来映えそのものよりも、その世界を単純に楽しめるかどうか。それが鑑賞の上で大きな鍵になるだろう。ブレアの森で魔女伝説や怪事件など無かったことを知った上で怖がる。つまり安全を保障された中で恐怖を愉しむという、実はホラーの愉しみ方の王道から何ら外れていないのだ。


ここまで書くと、映画の出来は芳しく無いのか、とお思われる向きもあるかも知れない。80分強の上映時間なのに、確かに後半は少々ダレる部分もある。だが夜のシーンでは恐怖を約束出来る。そして意外や意外に盛り上がる戦慄のクライマクス、議論必至のラストは、露骨な残酷描写満載の凡脈のスラッシャー映画より、遥かに鳥肌が立つこと請け合いだ。この映画には映画を観る上での大きな部分=想像する愉しみを堪能出来る点において、十分価値があるものと言えよう。


さて臨席のコギャル2人はというと、「ゴメンね、つまんなかったね」「寝ちゃった」「私も」だった。ノれるかどうかで、賛否分かれる映画には違いない。


尚、劇場でご覧になる方にご忠告を。座席は斜め後方がいいだろう。手ブレ映像ばかりなので、船酔いする。実は僕は劇場斜め後方だったのに、それでも酔ってしまった。酔い止めでも飲めば良かった。


ブレア・ウィッチ・プロジェクト
The Blair Witch Project

  • 1999年/アメリカ/モノクロ、カラー/86分/画面比:1.33:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for language.
  • 劇場公開日:1999.12.23.
  • 鑑賞日:1999.12.23./渋谷パンテオン/ドルビーSR
  • 公開初日の上映土曜夕方の回、1119席の劇場はほぼ満席。
  • 公式サイト:http://www.bwp-jp.com/ 結構楽しめます。