ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜
★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。
1960年代初頭、人種差別が根強くあるアメリカ南部のミシシッピ州ジャクソン。大卒直後で育ちが良く、黒人メイドに育てられた白人のスキーター(エマ・ストーン)は、地元新聞社で家事のコラム担当になった。ヴェテランメイドのエイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)の話を聞き、また親友らの露骨な差別意識を目の当たりにした彼女は、メイド達の声を1冊の本にまとめようとする。だがそんな事をしてばれたら殺されると、メイド達は協力を拒否。しかし少しずつ彼女たちの心情にも変化が起こり始める。
身体にあった、でもゆったりした上質のジャケットを着たかのような、観ていて幸せになる映画。人種差別の歴史を考えると甘いという批判はありましょう。それでも私はこの映画を断固支持します。要所は切迫感も描かれていたし、私はこれはこれでありだと思いました。単なる甘い砂糖菓子のような人情ドラマではありません。主眼は厳しい立場にあった女性達が、男どもに頼る事など全く無しに結託し、声を上げて立つ姿です。それを力み無く、しかし喉越しだけ良ければというのではなく、細部にまで考え抜いて作られています。優れた群像劇にあるように人物の画き分けも良かった。女優陣達の自意識過剰とは縁遠い連携プレイが素晴らしい。
今気になるスターの1人エマ・ストーンも良いし、ブライス・ダラス・ハワードとジェシカ・チャステインという、まさかのそっくりさん同士も印象に残ります。ブライス・ダラス・ハワードの嬉々としたビッチ振り。ジェシカ・チャステインの、物語が進むに連れて実は深かったと判明する役も見ものです。ジェシカ、君は映画に出る度に全く別人だよ!この先日に観た『テイク・シェルター』ともそうでしたし。若くて勢いのある役者を観るのは楽しいです。一方で久々にお見かけしたシシー・スペイシクも元気でした。
鈍感な私は終盤になってそれに気付きましたが、これは実質ヴィオラ・デイヴィスが主役の映画でもありました。彼女は本当に素晴らしい。アカデミー賞はハリウッドの祭りだから結果にとやかく言うつもりはありませんが、少なくともマーガレット・サッチャーのそっくりさん振りに感心しただけのメリル・ストリープより、ヴィオラ・デイヴィスの方が私の心に届く演技でした。彼女こそがこの映画の屋台骨、良心、気骨、優しさ、哀しみを体現しています。
監督のテイト・テイラーは昨年観た佳作『ウィンターズ・ボーン』にも俳優として出ていたらしいのですが、まるで記憶にありません。でも正統派ハリウッド映画の伝統に沿ったかのような、ゆったりとして品が良いだけでなく、ユーモラスで暖かな目線には好感を持ちました。トーマス・ニューマンの音楽も地味だけど良かった。2時間半近くあれども、最後まで引き込まれる映画でした。一見の価値のある、お勧めの映画です。
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