リンカーン/秘密の書



★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

黒人のみならず、白人労働者が雇用主に酷い目に遭っていた時代。貧しき家庭で育った幼きエイブラハム・リンカーンは、黒人の友達を残忍な奴隷商人バーツ(マートン・ソーカス)からかばった為に、母を商人に殺害されてしまう。実は商人は吸血鬼で、人身売買を隠れ蓑にして吸血鬼の餌を調達していたのだ。成長し、復讐に燃えるリンカーンベンジャミン・ウォーカー)は、富豪の若きプレイボーイ、ヘンリー(ドミニク・クーパー)に出会う。ヘンリーによれば、アメリカは吸血鬼に侵されており、彼らを殺害するハンターが必要だと言う。厳しい特訓の成果で吸血鬼ハンターとなったリンカーンは、弁護士の勉強をしながらも昼は雑貨店で働き、夜は得意の斧を使って吸血鬼ハンターとして暗躍する、2つの顔を持つ男になる。やがてメアリー・トッド(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)と知り合って恋に落ちるものの、吸血鬼の首領アダム(ルーファス・シーウェル)が彼を見逃す筈はなかった。


リンカーン/秘密の書』の原作は、セス・グレアム=スミスの歴史改変本『ヴァンパイアハンターリンカーン』。南北戦争は人間対吸血鬼の戦いだった…とするトンデモ本で、偽の文書やら写真やらが盛りだくさん。これは面白そうです。本作の監督はカザフスタンVFXを派手に使った吸血鬼アクション『ナイト・ウォッチ』で名を上げ、渡米後にトンデモ・アクション『ウォンテッド』でヒットを飛ばしたティムール・ベクマンベトフ。製作はベクマンベトフと共同でフルCGアニメ『9<ナイン> 〜9番目の奇妙な人形〜』を製作したティム・バートン。予想通り無邪気に生首が飛ぶ3D映画となっていました。


結論から言うと、かなり期待はしていたし、派手で荒唐無稽なアクションと首チョンパで楽しいものの、『ウォンテッド』の方が面白かったです。あちらとこちらでプロットが似ているのは、まぁ別に良いでしょう。アクションも楽しい箇所が多く、特に中盤に用意されている吸血鬼の本部である屋敷の襲撃場面は中々見せます。また、荒唐無稽で派手なスタンピード(牛の大群)の場面もわくわくさせられます。しかし全編メリハリ無くアクションが続くので、後半はいささかダレてしまいました。クライマクスの列車を使った大アクションもそうです。一瞬寝落ちしてしまいました。


物足りないのは歴史改変ものとして期待していたのに、単なるホラー・アクションになっていたからでしょう。ホラー・アクションは結構なのですが、歴史改変ものとしての描写ももっとあれば、と勿体無く思いました。リンカーンが残した詳細な日記が語っている物語という設定なのだから、そこら辺をもう少々生かしてくれても良かった。脚色も原作者自身が行っているので、思い切りが良過ぎた可能性もあります。吸血鬼は昼間も行動出来る方法があるとか台詞で言うのだから、説明してくれるかと思いきや、日焼け止め塗るだけで終了。粗いのは『ウォンテッド』も同様でしたが、ここでは荒唐無稽な歴史改変ものならではの配慮が欲しい。いつの間にか格闘技を習得していたり、鉄の斧の刃に溶かした銀をかけてもすぐ取れるだろとか、そもそも銀の武器は吸血鬼用ではなく狼男用だろうとか、突っ込みどころ満載なのは百も承知ですが。まぁ、そこら辺も楽しむ映画ではあります。


俳優陣には特に触れる事もありません。上映時間の間、そこそこ楽しめる映画ですが、忘れるのも早そうな1本です。3D効果も3か所程しか分からず、これならば2Dでも良いという代物でした。


リンカーン/秘密の書
Abraham Lincoln: Vampire Hunter

  • 2012年 / アメリカ / カラー / 105分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):PG12(殺傷・出血飛散の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。)
  • MPAA (USA):Rated R for violence throughout and brief sexuality.
  • 劇場公開日:2012.11.1.
  • 鑑賞日時:2012.11.3.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜12/デジタル3D上映。公開3日目の23時50分からの回は私らを入れて10人程度と、少々寂しい入り。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/lincoln3D/ 予告編、映画情報、DVD-VIDEO/Blu-ray Disc情報など。