のぼうの城
★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。
戦国末期の現・埼玉県にあった、周囲を湖に囲まれて浮城とも呼ばれた忍城（おしじょう）。城主・成田長親（野村萬斎）は武勇も知勇もないものの、その親しみやすい性格によって地元農民から「（でく）のぼう様」と親しまれていた。しかし天下統一目前の豊臣秀吉（市村正親）は、北条氏のいる小田原城を陥落せんと関東に軍勢を進める。秀吉は寵愛する石田三成（上地雄輔）を指揮官とし、2万3千を超す軍勢で忍城を落とすよう命令。ここに戦いの火蓋が切って落とされた。
石田光成が現在の埼玉まで来て城攻めしてたなんて知らなかったので、かなり興味惹かれました。周囲の評判も良かったのですが、これが実際に観てみると堂々たる時代劇大作になっているではないですか。VFXはインビジブルだと良く出来ているのに、スペクタクル場面になると急にチャチになるのはご愛嬌。ここら辺は邦画の限界なのかしらん。ともあれ、ドラマの犬童一心、VFXの樋口真嗣と、ぞれぞれ得意分野のある2人を共同監督にしたのは成功していました。戦闘場面も迫力があり、大画面で鑑賞するにふさわしい。ストロボ的撮影や、そのさ中に飛び散る血や泥の描写等を観るにつけ、未だにスピルバーグの『プライベート・ライアン』の影響力は凄いと思いつつ、真似ではなく新しい表現方法を披露してもらいたいものだ、とも思いましたが。
役者は揃っています。予告編を観てアレルギーが出ていた野村萬斎の演技は、少々大袈裟でもまぁ許せるでしょうか。トリックスター的な役柄とはいえ、野村の演技はもう少しで映画をぶち怖しになりそうな、かなり際どい印象を受けました。さすがに踊りの場面での動きはびしりとしていましたが。ただ気になったのは、長親が人徳で武士や民を率いているのは分かったものの、司令官としての資質がまるで伝わってこなかったのです。後半の「舞」の場面で人心掌握術に長けたのは分かるのですが、あれでは単なる人の良いお殿様なだけ。緊急事態の際たるものである戦争状態には、リーダーにはより求心力が求められる筈。この映画はこの点の扱いが酷くいい加減なのが気になりました。
驚いたのは張飛か、と言いたくなる山口智充です。腕もぶっといし、豪放磊落な感じも良く出ていました。佐藤浩市はさすがにカッコ良い。握り飯頬張るショットも最高でしたが、タイプキャストに頼っていた感は否めません。上地雄輔や山田孝之も良かったです。
映画全体を忍城を巡る攻防戦に集約したシンプルな構成が、成功の主要因でしょう。観ていて高揚感があるし、合戦前はかなり盛り上がります。但し終盤、戦の終了後が少々長く感じました。これは余り頂けません。相対的に140分余の上映時間を、最初から最後まで飽きずに楽しめる娯楽大作ではありましたが、物足りなさも感じました。
上野耕路の音楽が、時々ジェリー・ゴールドスミスの『猿の惑星』（1968）の「人間狩り」を思い出させました。ピアノを打楽器的アプローチで用い、スリルを盛り上げるところなんかそっくりです。また、映倫で「G」（誰でも観られる）と知ってて観たのでびっくりしました。槍での串刺しに首チョンパ、血しぶき、男性背面全裸と、何でこれがGなのやら理解出来ません。映倫審査は邦画に甘いのではないでしょうか。洋画だったら確実にPG12になると思しき描写が多いのですから。身内（国内）に甘い審査に見えるのは、海外ゲームに厳しいCEROと共通なのでしょうか。
のぼうの城
The Floating Castle
- 2012年 / 日本 / カラー / 145分 / 画面比：2.35:1
- 映倫（日本）：G
- MPAA（USA）：-
- 劇場公開日：2012.11.2.
- 鑑賞日時：2012.11.24.
- 劇場：ワーナーマイカルシネマズ港北5／デジタル上映。公開4週目の3連休中日の土曜朝9時40分からの回、劇場は20人程の入り。
- 公式サイト：http://nobou-movie.jp/ 作品情報、予告編、壁紙など。「ご鑑賞に際してのお知らせ」というページには、本編に水攻めがある事を記載。震災後の配慮が伺える。
