未知との遭遇


★film rating: A
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

UFOを目撃した平凡な男(リチャード・ドレイファス)はUFOに取り付かれ、人生を大きく狂わせていく。追い求めたその果てに待っていたものは・・・。


人によってはスティーヴン・スピルバーグの最高傑作という評価も当然の、SF/ファンタシー作品。語り口の上手さには唸らされること請け合いで、何が起こっているのか、という不安で通す序盤からして演出は快調。終盤の盛り上がりと宗教的体験は筆舌に尽くしがたく、文字通り光と音の洪水に圧倒される。大画面で観るのが必須の大作だ。そしてそこには近年には無い若さとパワーがあるのだ。


主人公役ドレイファスは『ジョーズ』の海洋学者と全く違うアプローチをしていて、この人は本当に演技が上手い。彼が演じている小市民には同情を禁じえないのだ。そしてスピルバーグたっての望みだったラコーム博士役フランソワ・トリュフォーが絶品だ。その思慮深く優しげな眼差しと顔付き、どこか茶目っ気さえ感じさせる人柄が、作品に柔らかな輪郭を与えているのである。このキャスティング無くしては、作品の成功は無かったであろう。テリー・ガーやメリンダ・ディロンも良い。スピルバーグと彼女らが醸し出す生活感が、突飛な(と敢えて言おう)物語と観客の接点になっているのだ。


映像面では名手ヴィルモス・ジグモンドの自然光を生かした撮影が絶品。この映画はクライマクス部分の為だけにそこまでが存在している、と断言しても過言で無い作りだ。だからこそ、特撮監督に珍しく、独自の刻印をアートとして刻むことの出来る稀有な映像作家ダグラス・トランブルによる終盤の光のページェントが生きるというものだ。ここで何ら心動かされない人は不幸と言うべきであろう。カルロ・ランバルディとトム・バーマンによるエイリアンの特撮も、今観ると必ずしもリアルではないのだが、やはり撮り方が上手いので、感動を盛り上げるのである。


グレッグ・ジーンによるミニチュアも素晴らしいし、追加撮影部分の撮影監督もズラリ豪華で驚かされる。ウィリアム・A・フレイカー、ダグラス・スローカム、ジョン・A・アロンゾラズロ・コヴァックス。達人・巨匠らがこれだけ集まるというのも非常に珍しい。早熟な天才監督による初期の傑作は、やはり技術の作品でもあったのだ。


未知との遭遇
Close Encounters of the Third Kind

  • 1977年 / アメリカ / カラー / 137分 (1998年ファイナル・カット版) / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG
  • 劇場公開日:1978.2.25.(初公開版)、1999.10.31.(ディレクターズ・カット版 東京国際ファンタスティック映画祭
  • 鑑賞日時:1999.10.31.
  • 劇場:渋谷パンテオン ドルビーデジタルでの上映か? 1119席の劇場はチケット完売で立ち見も出る盛況。