TIME/タイム



★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

近未来のアメリカ。そこでは遺伝子工学の発達により、全ての人間は25歳になると成長が止まるように制御されていた。左腕に表示される時間が余命であり、人々は通貨の代わりに時間を稼ぎ、売買しているのだ。大富豪は数百年から数千年も余命があるものの、スラム街では余命1日の状態で肉体労働に励む人々で溢れ、道には時間切れになった遺体が転がっているのも日常だった。ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)もスラム街の住人の1人だ。ある日、ギャングに狙われていた大富豪を救った事から余命100年以上の身分となり、富豪らが暮らすゾーンに侵入、富裕一族の娘シルヴィア(アマンダ・セイフライド)と知り合う。一方、時間取締官レイモンド(キリアン・マーフィ)はウィルの後を追うが。


監督&脚本&製作のアンドリュー・ニコルは、処女作にして代表作『ガタカ』が素晴らしかった。階級社会を描いた様式化された寓話的SFスリラーの佳作で、ファンも多い作品です。無論、私も大好きな映画です。本作は、同作を想起させる自動車走行音からしてニコル節全開。イマジナリー・フォーシズのメイン・タイトル・デザインからして、にやにやさせられてしまいます。本作における寿命の設定については科学的裏付け皆無だ、という批判もありますが、寓話と割り切って観たので、私自身はまるで気になりませんでした。全編ニコル好みで統一されたプロダクション・デザインや、効果音など素晴らしい。雑多で活気のあるスラム街と、硬質で生気の無い富裕街。往年のアメリカ車をベースにしたと思しき未来車も、つるんとしていてレトロモダン。それでいて電気自動車の音。こういったデザインは派手ではないものの、見どころの1つとなっています。


でも正直言って、これは『ガタカ』の劣化版でした。様式化された世界は魅力的だけども、アクションもスリルも切れが無く、わくわくする筈の展開も弾みません。『ロード・オブ・ウォー』なぞ、それなりに迫力あった記憶があるのですが。またメッセージは直接的で分かりやすいものでしたが、それ以上のものも感じられませんでした。時間は大切だ。富の一極集中は良くない。若さにこだわるのは愚かだ。ナルホド、至極真っ当な指摘です。しかし上手な映画とは、提示したメッセージの先を観客に考えさせるものですが、その点からするとこの映画の脚本は下手なのです。言いたい事は分かりますが、だからどうなのか、と。


となるとやはり見どころは映画のルックとなり、前述のデザインに加えて、ここは若手スター2人にどうしても目が行きます。主役のアマンダ・セイフライド(サイフリッド)とジャスティン・ティンバーレイクは観ていて楽しかった。若くて勢いのある美男美女は目の保養です。ティンバーレイクは『ソーシャル・ネットワーク』から『ステイ・フレンズ』で見せてくれた勢いを持続中だし、サイフリッド嬢も活きが良い。対する追跡官役は、不気味顔でお気に入りのキリアン・マーフィ。『バットマン ビギンズ』のスケアクロウと言えば通りが良いでしょうか。ウェス・クレイヴンの佳作スリラー『パニック・フライト』も印象的ですね。本作では出番も多いし、思いの外結構な活躍を見せてくれます。まぁ、マーフィはともかく、出演者は全体に美形が多く、ここら辺も『ガタカ』を思い出させました。


鑑賞中は引用元の映画の題名を脳内で反芻しながらのものでした。『未来惑星ザルドス』、『2003年未来への旅』、『俺たちに明日はない』、『マトリックス』…。そんな楽しみもあれ、また目の保養にこそなれども、作り込まれた世界観以外の深みを享受出来なかったのが残念でした。


TIME/タイム
In Time

  • 2011年|アメリカ|カラー|109分|画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for violence, some sexualty and partial nudity, and strong language.
  • 劇場公開日:2012.2.17.
  • 鑑賞日時:2012.2.18.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ港北1/ドルビーデジタル上映。公開2日目の土曜20時50分からの回、シネコンの388席の大劇場で半分の入り。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/time/ 「恋愛消費チェッカー」「”時間”に追われている現代人にもすぐわかる『TIME/タイム』」など、目を引くコンテンツがちらほら(^^